2017年10月19日木曜日

土払い品500鉢

10日ほど前に隣市の某愛好家さんから土払い(どばらい)のお話しがあって引きうけることにしました。盆栽界で土払いというと、盆栽や鉢などすべての持ち物の売買のことをいいます。

プロでもアマチュアであっても、生き物(盆栽)の後継者がいない場合は売り払うか、さもなくば枯らすことになります。好きな方を見つけて差し上げるのも方法ですが、次の愛玩者を見つけるのは案外簡単ではありません。本音はまさに時間の問題でもあるんです。

ご家族の側から云うと、ずいぶんと可愛がってきた生命ですから当然愛着もあって、金銭で割り切るわけでなくともやはり命ある生き物であることから、早めに手放さざるを得ないのが実状なのです。

このあたりが盆栽趣味のほろ苦いところでしょうね。

ところで、このお宅ではご家族の方が亡くなったご主人の趣味にずいぶんとご理解があったようで、四十九日の法要が済むまでは水やりをかなり頑張ったようです。私としても、主人に置き去りにされてボロボロになった盆栽でなくてホットしています。


ご家族の方がざっと数えたところでは、ひっくるめて500鉢ほど。ご覧のようにそうレベルの高い盆栽ではありませんが、とにかく大小あわせてそれくらいの数はあるようです。


手狭な宮本園のビニールハウスは満タン!ふだんは盆栽を置き場ではない玄関周りにも溢れ返った土払い品。


窮屈、これじゃ水やりもできない!!!


これまたふだんは盆栽を置かない表のバス道路沿いの塀際までビッシリです。


バス道路に面した塀際は、物騒なのと日当たりの関係で盆栽置き場には不向きな場所ですが、この際そんなこと云ってはいられません。買っちゃったものだからとにかく頑張って運びました。信じられない、500鉢!!

ちなみに、黒松、五葉松、錦松、真柏、レンギョウ、ニレケヤキ、寒椿等々の樹種がありました。

2017年10月6日金曜日

黒い実の姫柿

市内の親しい愛好家さんから黒い実の姫柿(老爺柿)を譲ってもらいました。以前から頼んでおいたのですが、なんでも秋になって柿の実が色づいてこないと真っ黒い実成りの特徴が出てこないそうで、ずいぶんともったいぶって今まで待たされました(笑)。

この方はかなり以前から姫柿のいろいろな種類の蒐集や繁殖が得意で、実生や挿し木で新品種を作出したり繁殖したり、また園芸の範疇に止まらず盆栽としての樹形作りまで手がけています。


入梅から夏ごろでは黒実の特徴はまだ見分けがつきにくいが、秋になると多品種に先駆けて赤っぽく色づき始めます。さらに実の形が図のようにやや細長くなっているのが特徴です。名の知れた楊貴妃や都紅などの赤系統の品種とは形が違いますね。


朝晩の気温が下がり始める今頃になると色が濃くなり始めます。肥料がよく効いていると実の艶も一段と冴えてくるようです。すると、次第に図のように墨を吹きかけたような細かい斑点が現れてきます。これが下地となって霜のころには真っ黒い艶のある実成りへと変化していくのです。きれいですよ。


最初はゴマ状ですが、次第に墨を塗ったような艶のあるみごとな黒色へと変化していきます。


日当たりのいい箇所ほどいい変化が見られます。また、実の形は丸や楕円ではなく、このようにやや胴のくびれた細長い形をしています。

まあ、私達盆栽人は、実の色に強い拘りをもって品種の蒐集に一番の重心を置いている、いわゆる「姫柿専門愛好家家」ではありませんから、あくまで植物の盆養と造形を優先させる盆栽作りの気持ちを忘れてはいけませんが、たまには珍種奇種の面白さを無邪気に喜んでみるのも一興かと思います。

そんなわけで今年の秋は、黒い実成りの姫柿を鑑賞してみるつもりです。

2017年9月30日土曜日

寒冷紗外し

入梅中には雨が少なく、かと思えば夏の間には局地的な大雨があったり、さらに秋になっても日照の少ない日々が続いたりと、非常に不安定な気候が続いています。

そんなわけで、今年は比較的早めから寒冷紗外しのタイミングを狙っていました。遅くなれば秋の充実期に日照不足を加速させてしまうからです。

とはいえ、設置してあるものを取り外すのはついつい億劫な作業なので、、自らを励まして叱咤するのが毎年の習になっています。ああ、しんどい!


斜めの日照を遮るためのカーテン状に張った寒冷紗をまず外す。屋根の部分はその後。


カーテン状の寒冷紗を外しただけで、グーンと明るさが感じられます。。と云うことは逆に云うと、寒冷紗の効果が実感できるときでもあります。カンカン照りの元ではかえって遮光率50%の効果は実感できにくいものなのです


あらかたの作業が終わりましたが、来年用に備え寒冷紗の収納だけは丁寧にやっておくこと。このわずかな気遣いが来年の設営作業の能率に大いに影響します。

ところで、今年の夏の日照が少なかったせいで、正面に写っている舞姫もみじの素材の作柄がいいようです。やはり例年よりも真夏の環境がやさしかったようです。

例年だといくら寒冷紗下でも葉焼けで傷んだ部分もあって、葉全体がこれほど青々としてはいませんね。


さて、この五葉松の大木も寒冷紗の下で夏を過ごしました。その昔はどこの盆栽屋でも、五葉松の大木は一年中棚の不動の位置に鎮座ましましていたものですが・・・

つまり、春から秋までの培養期はもちろん、夏でも涼しい場所へ移動する必要はありませんでした。そして、寒さにもビクともしない強靭な性質に恵まれているのですから天下無敵です。

ところがこの20年ほどのこと。気候の温暖化によって手がかからないはずの五葉松の培養法がやや変わってきました。つまりお勧めしているように、真夏の間の寒冷紗による保護が必要になってきたのです。


寒冷紗のお蔭で五葉松も真柏の小品も上々の作で、葉色抜群です。


入梅明けから9月中旬まで、真柏、黒松、杜松以外の樹種は30~50%の遮光率の寒冷紗で保護してやりましょう。
それでは。

2017年9月24日日曜日

思い出の銘鉢(18): 平安香山 均釉菱格子透彫長方

盆栽屋.comの「思い出の名鉢」シリーズ(お客様にご購入頂きましたが)思い出深い名鉢をみんさまの鑑賞用に復刻致しました。また、この場をお借りして愛蔵者の方々に感謝申し上げます。どうぞ小鉢の勉強にお役立て下さい。



間口13.6×奥行11×高さ7.0cm

平成17年3月に近代出版より発行された「月之輪湧泉・平安香山」の作品集に掲載され
「精緻を極め釉色にも優れる傑作。香山透彫の傑作である」と絶賛された本作品

この度、親しい収集家のご好意により、盆栽屋.comの目玉商品として、別記のようにお勧め価格にて掲載することが出来ました
二度と実現不可能な価格設定に加え、このような「図録もの」の名品がが市場へ出回ることは非常に珍しいことも添えておきます

どうぞ、ごゆっくりとご覧下さい

無傷完品です
(近代出版より掲載された作品集付)

(近代出版より)
作品集の表紙
(定価3.800の豪華内容)

(近代出版より)
誌上の紹介写真と解説文
(作品の定価はこの作品集付になっています)


平安香山の均釉は小鉢の世界ではあまりにも有名で、「香均釉・こうきんゆう」と造語されているほど
その香均釉に囲まれ二重の鉢壁に菱格子が掘り込まれています

「カミソリ」と異名をとった香山ならではの、精緻にして華麗な技に改めて感動させられます
そして、二重の鉢壁の厚さは普通の鉢並みなので、鉢としての実用機能も充分に備えているという、稀有な逸品


側面をのぞく角度より


同じく側面をのぞく角度より
両側面には窓をきり絵付けが施されています

格子浮彫の豪華さと染付けとの絶妙な調和
この優れたデザイン性が、名品の評価をさらに高めています
ましてや香山の絵付け鉢の稀少なことは知られています


側面


側面


鉢裏


戦後の早い時期の作品です

思い出の銘鉢(17):宮崎一石 赤絵山水図切立正方

盆栽屋.comの「思い出の名鉢」シリーズ(お客様にご購入頂きましたが)思い出深い名鉢をみんさまの鑑賞用に復刻致しました。また、この場をお借りして愛蔵者の方々に感謝申し上げます。どうぞ小鉢の勉強にお役立て下さい。

間5.3×奥行5.3×高さ5.2cm

峻険な深山から水辺まで
壮大なスケールの景観をわずか5cm四方のミニ鉢に描き切った、一石全盛期の究極の赤絵名作

大胆で斬新な構図と微細な筆のタッチは、ここに特に際立って冴えわたり
緊張感のみなぎる画面を見つめてるとき、改めて一石の高度な技巧に感動させられます

一石作品群の中において間違いなく赤絵名品に属する質の高い仕上がり
無傷完品

平凡社「まめぼん」より

なお、この一石赤絵鉢は最近「平凡社」より発行された上記表紙「まめぼん」(定価¥1.600)の
「まめ鉢名品コレクション」において宮崎一石の代表作として掲載されました

平凡社「まめぼん」より


微細で緊張感のみなぎる線と巧みな陰影によって描かれた峻険な山や岩
余白のとりかたも一石独特の鋭い感性が冴えています


拡大図
画面の隅々まで神経が行き届いています


対照的に牧歌的な雰囲気を漂わせる画面


水辺の景色
岩頭に鼎立する松の描写はあまりにもみごと
岩の描き方もじつに巧みです


拡大図


一変して高士が登場する静かな画面
画面右半分にたっぷりと余白を取った構図が余韻を感じさせます


拡大図


鉢底の様子と落款
「阿びこ山・一石作」

思い出の銘鉢(16):宮崎一石 染付け山水図切立長方鉢

盆栽屋.comの「思い出の名鉢」シリーズ(お客様にご購入頂きましたが)思い出深い名鉢をみんさまの鑑賞用に復刻致しました。また、この場をお借りして愛蔵者の方々に感謝申し上げます。どうぞ小鉢の勉強にお役立て下さい。



間口10.8×奥行8.5×高さ4.9cm

一石の同時期と思われる、間口、奥行き、高さがほとんど同じサイズの作品を散見しますが
いずれも精密な描き込みと構図のみごとさを示し、逸品ぞろいです

この作品も、両正面には人物を巧みに配し、絵画の物語性を強調し
山里の穏やかな風景と深山幽谷の自然とを左右の側面に描くなど、四面の絵画の奥深さにも工夫が見られます

まさに東洋山水画のスケールの大きな世界を
小鉢という小さな空間に描き切った一石の魅力溢れる逸品です

無傷完品


側面より
ゆがみよじれのない安定した線に囲まれたボディー


曲がりくねって上流に消える川や遥かなる山並みは
小橋を渡る高士の高邁な精神性を暗示しています


側面は里山の景色


こちらの側面は深山幽谷の厳しい景です


深山幽谷の拡大図

一石の絵画の特徴は、その落ち着いた的確な筆致と、微細で巧妙な筆のタッチにあり
決して輪郭線の勢いだけで見せるのではなく、根気よく対象物を描き出す叮嚀さと表現力に優れています


鉢底の様子


落款は小さめの一石
これは比較的初期に近い時期に使われています


落款拡大図

思い出の銘鉢(15):大助染付 雷神図丸鉢

盆栽屋.comの「思い出の名鉢」シリーズ(お客様にご購入頂きましたが)思い出深い名鉢をみんさまの鑑賞用に復刻致しました。また、この場をお借りして愛蔵者の方々に感謝申し上げます。どうぞ小鉢の勉強にお役立て下さい。


間口7.8×奥行7.8×高さ6.0cm

数ある大助作品の中でも、雷神を描いたこの染付鉢は傑作といましょう
力のこもった筆致でリアルな表現の雷神、まさにど迫力
改めて大助の絵のうまさに感動します

これほどの使い味を持ちながら
無傷完品


鉢底の様子
薄手のすっきりした磁器のボディーです


雷神拡大図
恐ろしい顔の表情、筆致に力がこもっています
細部の足の爪先の表現などにも注目


呉須の濃淡もみごとです


大助の落款が見えます

土払い品500鉢

10日ほど前に隣市の某愛好家さんから土払い(どばらい)のお話しがあって引きうけることにしました。盆栽界で土払いというと、盆栽や鉢などすべての持ち物の売買のことをいいます。 プロでもアマチュアであっても、生き物(盆栽)の後継者がいない場合は売り払うか、さもなくば枯らすことになります...