2007年11月9日金曜日

千葉県盆栽名品展より

今年はあの夏の猛暑とそれに続く過酷な残暑、おまけに台風の当たり年のため
雑木類の葉のあがりが悪く、県展の出品も松柏類の方が多い

反対に冷夏の年は、松柏類の葉が伸びなかったり、うまく揃わなかったりで
それが秋以降の展示会の出品傾向に影響を与えます

という具合で、ちょうどいい年って案外に少ないんですね

では、少ない雑木類の中で、私の気に入った「いぼた」の双幹をご紹介します


樹高は約50cmほどで、盆栽としては大きすぎず小さすぎず、ちょうど手ごろなサイズ
松戸市に隣接する流山市の愛好家さんが出品されたものです

見どころをいくつか上げてみます

・鉢を小さくしめて左下の空間を大胆に演出した感覚
・親の足元の子幹を小さく作り込み、全体の枝も大小の弾みをつけたバランス感覚
・小枝の先や幹肌に持込の古さが伺え、抜群の管理

いぼたという樹種は関東地方の山里に普通に自生していて
私の住む松戸市にも見られますので、山採りも可能です

ごくごく地味な樹種ですが、持込とともに枝が密になり
灰褐色の木肌が古色を帯び、なかなかに趣が感じられるようになります

盆栽に仕立てられるようになったのはそんなに昔からではなく
30年から40年くらい前からでしょう

ですから、このいぼたの双幹は、現在の盆栽界においてごくごく古木のうちに入ります
私の観るところ「国風展」にも入選の可能性があるので、思い切って挑戦することを勧めました

ただし、鉢をもっとおごることが必須の条件です

2007年11月8日木曜日

第31回千葉県盆栽名品展より

恒例の千葉県盆栽名品展が開催されました
期間は11月2日から4日、場所は千葉県柏市にある県民プラザのギャラリー

さて、出品された盆栽の中からいくつかを話題にしてみましょう

早速ですが↓の直幹の樹種、わかりますか?
樹高はおおよそ80cmくらいで、幹の直径は足元でやや30cmもあったでしょう

ともかく、一目見て樹種の見当がついた盆栽人はかなりのベテランですよ



正解は、八房五葉松の「九重・ここのえ」
樹齢は推定でおおよそ40年から50年くらいでしょう

思い出しますと、この九重が1本の接木苗としてこの世に誕生したしたころ
盆栽界はまさに直幹ブームだったのです

樹種の特性も考えずに、何でもかんでも針金をかけて真っ直ぐにして
無理やり直幹体に仕立てました

今でも、その当時名木と称された黒松や九重などの古木に出会うことがありますが
多くは、その後の直幹ブームが去ったあと持ち主の情熱が薄れ、培養が行き届いていない場合がほとんどです

作落ちしせがれた黒松や九重を見ると
零落した過去の遺物をみるような、やるせない哀しい気分になります

しかし、稀にこの九重のように、満々たる生命力をみなぎらせ
天にすっくとそびえた力強い直幹の姿に接すると、ほんとうに嬉しいですね

直幹体の神々しいまでの荘厳な雰囲気
しっかりと管理された直幹盆栽の少なくなった現在では、まさに貴重な名木です

流行の変遷に惑わされることなく、ここまで育て上げた作者の一途な情熱に対し
盆栽人のひとりとして、賛美と感謝の念をお伝えしたい

以上、このような感慨を覚えながら、この九重の直幹を鑑賞しました

教訓:流行は一時のもの、ただし盆栽の命は悠久のもの
一時のブームや流行にとらわれずにわが道を行きましょう

2007年11月6日火曜日

黒松葉透かし(続)

前日の黒松と同時に手入れをした黒松もご紹介しましょう

二年前に、幹模様と枝順のよさにほれ込んで手に入れた黒松
樹高は12.5~13cm以内でゆっくり出来上がる、ピッタンコ、現在の人気サイズです



二年前に春の葉透かし作業後の画像

模様に間の抜けた緩みがないですね
それに、曲の外側に理想的な枝配りもばっちりです

模様をつけるための切り戻しの傷がまったくないのも
このサイズの黒松としては、ごくごく稀少だと自負しています



作業途中

一年目はほとんど夏の芽摘みをせず、もっぱら樹勢をつけることに専念
二年目の今年は春に植替え、7月10日以後に芽摘み(短葉法)しました

但し、強い芽だけにして、普通以下の勢いの芽は切らず(葉が伸びている部分が芽摘みをしなかった箇所)

注意点:芽摘みはすべての芽を切るのではなく
各芽の勢いをみながら、強い芽は摘み、弱い芽は切らない、という思い切った調整が必須



↑の二年前の姿と見比べてください、葉数もふえて貫禄がでてきましたね

先日親しい友人がこの黒松を見て、太ったね、とびっくりしていました
写真で見ると目立たないのですが、実物を手にとってみると成長がよくわかるんです

きっと来年以降は、さらに加速度がついて旺盛な生育をみせてくれるでしょう

要点:盆栽の太りは芽数と葉数の多さに比例します
太らせたい木は多めに、反対に太らせたくないものは少なく、芽と葉の数を調整するように

2007年11月4日日曜日

黒松葉透かしなど

近年稀なる、暑く過酷な夏を経験した今年の培養シーズンもようやく終わり
そろそろ盆栽の鑑賞期に入りました

1年間の培養の成果を確かめ
来季のための構想を練りながら準備作業も始めましょう

さて、この夏の芽摘み(短葉法)を昨年よりも10日ほど後にずらしました
例年は7月1日を目安にしているのですが、今年の夏の暑さを考慮したのです

注意点:7月1日はあくまで関東地方の標準であって、極言すると「盆栽屋.com」の適期なのです
地方や個人の培養条件のよってかなり前後しますので、早く自分なりの最適期を見つけ出しましょう

結果は上々、樹勢も葉の伸び具合もよしで
やはり黒松は暑さが大好きなようです

10月の初旬から半ばにかけ、今年最後の肥料をタップリやっておき
11月に入ったら、葉透かしと芽数の調整などの作業を行います


7月11日に頭の部分を中心に夏の芽摘みをしました
向かって左の一の枝については、力をつけるためにごく強い芽だけを摘み
普通以下の勢いの芽は芽摘みをせず、そのままの状態

葉の長い芽は芽摘みをしなかった箇所です
おかげで一の枝には勢いがつきました

さあ、作業にかかりましょう


頭の部分の作業
新葉の元に残った古葉は、葉の元を数ミリ残してすべて切り取ります(盆栽用語:もみあげ取り)

注意点1:小品の場合、ピンセットで引き抜かず、必ずハサミで切り取ります
葉元に隠れた芽の吹き出しを期待するためです

注意点2:一箇所から3本以上の芽が密集して出ている場合は
残す芽数は最多で3本まで、残りの不要芽は切り取ります


頭部の葉透かしと芽透かしを終えました
真上より


短葉法をかけなかった一の枝周辺の長い葉を、やや短めに切りそろえます
こうすると全体の姿がよく見えて、来季の構想を練るために便利です

注意点:葉切りをする場合は、よく切れるハサミを使うこと
また、切った後に霧水をたっぷりやって、葉の切り口からハサミの金っ気(かなっけ)を洗い流すとよい


完成に向けての構想を練ってみました
ご覧の通り、今後の目標は向かって右の枝葉の充実にありますね

注意点1:図のような輪郭線を早く作るためには、焦りは禁物ですぞ
急ぐと、フトコロに芽のない間抜けた枝になってしまいますよ
じっくり時間をかけ、3年計画で輪郭を仕上げていきましょう

注意点2:冬季の鑑賞のため、葉透かしは軽めに行いました
来春の出芽前に、現在の新葉のもみあげも3~5対残して透かす、という大切な作業が残っていますので、忘れずに

さあ、みなさん、マイ黒松の手入れをしよう

2007年9月30日日曜日

赤松の空間調節

松戸市近隣の愛好家さんが、棚がいっぱいになってしまって
15鉢ばかりの盆栽の処分をお願いされました

よく見ると、非常に熱心で丁寧な作柄の方なので
わずかな勘所さえ押さえればいずれも再デビューが可能なものばかり

大雑把に処分してしまうには惜しいし盆栽たちも可愛そう
私が譲り受けることにしました

さて、その中の一鉢、赤松です



小さな鉢にしっかりと持ち込まれています、これには感心
鉢にピッタリ納まっていてグラットもしません

根がしっかりしているということは作柄のいい証拠
盆栽としての第一条件です

人工の模様がやや目障りな感じですが
全体の流れと重心、枝の順とふくらみなどはまあまあです

しかし、全体の構図にちょっとばかり空間がありすぎて緊張感に欠けるかな
それで、手で矯めてみると現在の樹高20cmがもっとコンパクトになりそう



現在の後ろ姿



二箇所を締めてコンパクトになった姿
(難しい作業ではないので経過は省略)

いかがですか
樹高は17cm、空間が少なくなった分、構図に緊張感が出ましたね



作業の舞台裏

1 ビニール管を通した針金で幹と幹を結束
2 鉢裏から通じた針金で樹高の短縮のため引っ張りを施しました

このように、ちょっとした工夫で構図に緊張感を出すようにすれば、樹形がグーンと引き立つものです
あなたの盆栽は空間が緩んでいませんか、点検してくださいね

空間に緩みがあっては樹形が締まり!ません!

2007年9月18日火曜日

楓寄せ植え落下

あの大切にしている楓寄せ植えが、一本棚から地上に落下!
今月初めに列島を縦断した台風9号が、関東を通過した7日の朝方でした

前夜は夜半過ぎまで起きていたので、目を覚まして庭を点検したのが午前5時半ごろ
私の住む千葉県北西部では、6日の真夜中あたりが台風のピークと予想されていました

周到な避難や養生をしておいたおかげで、盆栽は全員無事、被害ゼロ、を確認
そして、台風は既に関東北部の桐生市あたりを北上中であることをテレビで知り、やれやれ一安心

そのとき、突然一陣の強風が吹いたのです
強烈な風の音はもちろん、家が揺れていると身体に感じるくらいの凄さでした

れれッ!
台風は通過したんじゃないのか?

心配になって縁側の戸を開けてみると、庭の風景がどっか違って見えるじゃないですか
目を擦って見直せば、違ってるはず、一本棚の上の楓の寄せ植えが、なくなってるー!


という有り様で、一本棚から地上に落下した、私の大のお気に入りの楓寄せ植え、落下後の姿
ちょっと軽く縛っておけば、墜落しなかったでしょう

ごめんね楓クン
でも、君はもっと強いと思ったんだよ

それにしても、台風の中心部が通過してからの一陣の突風で、この安定のいい平鉢が転落するんだから
油断大敵でした

↓の昨年の秋の姿とよく見比べてください


盆栽つれづれ草の表紙、これは昨年秋の姿


被害の実態報告です

手前のはね出しの二股の片方が、飛び散ってしましました


一番左側の幹の、下枝は元から失われ、その上の枝にも損害

あまりのショックに、10日以上経った今でもそのままの状態
以上、涙ながらの台風被害報告でした

2007年9月12日水曜日

広東鉢と東福寺

古代より近世に至るまで、私達日本人は中国大陸文化の影響を受け
それを手本として学んできました

盆栽の世界においても、中国文化の影響により今日の盆栽文化が発達しえたことは
誰もが認めるところです

大正の初期より作陶に入ったとされる名工・平安東福寺の作品からも
支那鉢の影響とそれへの強い憧憬がうかがえます

もちろん、それ以前の先駆者である大日本幹山、真葛香山、井上良斎、小野義真、竹本隼太などからも
影響を受けてはいますが、数多い東福寺の作品に接したときに感じるのは

なんといっても、支那、それも広東鉢の色彩と質感
さらにはざっくりと手作りの味を感じさせる形状の印象です


広東外縁丸鉢

平安東福寺の「緑釉もの」はかれのもっとも得意とし、また評価の高い釉薬
深い緑の釉薬の再現に情熱を燃やしたのです

みなさんが広東の緑釉鉢を鑑賞するときには
この釉薬の透明感と濃淡の味をしっかりと認識してくださいね


平安東福寺 瑠璃釉鋲打太鼓胴楕円

緑釉と並んで瑠璃釉も広東鉢の代表的な釉薬
平安東福寺も同じく緑釉と瑠璃釉を得意とし、作品の数も多いのです

やはりここでも東福寺は釉薬の透明感を尊重しています
生地が透けて見えるほどです


広東鉢の縁の上側

緑の釉薬が窯変により微妙な変化をおこし、えもいわれない効果を上げています


平安東福寺 緑釉外縁丸

広東鉢の緑釉の窯変を再現すべく施釉を工夫をした東福寺の作品
苦心のあとがうかがえます

このての作品には名品が多いのが特色
ざっくりとした手作りの味も広東鉢に倣った東福寺のセンスが感じられます


広東鉢の鮮やかな緑釉の発色

土払い品500鉢

10日ほど前に隣市の某愛好家さんから土払い(どばらい)のお話しがあって引きうけることにしました。盆栽界で土払いというと、盆栽や鉢などすべての持ち物の売買のことをいいます。 プロでもアマチュアであっても、生き物(盆栽)の後継者がいない場合は売り払うか、さもなくば枯らすことになります...