2010年8月13日金曜日

アマチュア・ミニ名人

まだ直接お目にかかったことはないが
私が内心敬服しているアマチュア作家がいらっしゃる

年に数回、私は人づてに作品にお目にかかるのだが
たくさんのミニ盆栽に混じっていても、それらは特別の輝きをもっているのですぐに目に入ります

先月にもフラリと仕入れに出かけた先の業者の棚に、後光の差したような逸品数点が目についたので
抜き出して価格の交渉に入って求めたら、なんとそれらがすべがその作家の作品であった

それらは、そこそこのミニ盆栽がずらっと並んだ多数の中に混じっていても埋没することなく
特別に光り輝いていたので即座に私の目を惹きつけました

やはり魅力のある盆栽は、こちらが目を皿のように探さなくとも
自ら輝いてその存在をアピールするので、私たちの視線はたちまち吸い寄せられてしまうのですね

さてそれでは、これら作品の魅力の秘密はどこにあるのでしょう
どうしたらこのようにひとの視線を吸い寄せる輝きがでるのでしょうか

この作家のミニ盆栽作品には

1 大胆でスケールの大きな構図
2 持ち込みの古さと、的確な培養管理
3 盆栽を引き立てる鉢の選定

の優れた三大特徴があります

もちろん他にも優れた点はありますが
この三点が他に抜きん出ています


杜松ミニ 樹髙5.5㎝

1 大胆に傾斜をもった立ち上がりと、向かって左の利き枝の力関係が絶妙のバランスを保っています
  まさに緊張感と動きのあるスケール大きな構図です

2 枝葉の長さはかなり抑制されながらも、植物としての生命力に満ちていますね
  この小さい目の鉢で、これほどの作柄を維持するにはかなりの努力と工夫が必要です


各点は1.0㎝単位です

3 約4.0㎝に近いボリュームのある立ち上がりですが、使用している鉢の直径は7.0㎝未満の八角
  幹径:鉢の間口の比率は約1:2に近く、鉢のサイズを目一杯しぼっていますね

  このミニ杜松がこれほどの力量感を発揮しているのは、この大胆な鉢使いによるものです
  また奥行きにも考慮して丸に近い八角鉢とし、培養面への配慮も感じられます

4 鉢に収まっている感じに、小さな鉢に押し込んだような無理がありませんね
  このことは盆栽を鑑賞する側からすると、かなり大切なポイントです
 
  展示会用の急場の仕事ではなく、普段からこの小さな鉢の中ではつらつと生気を放っている
  制作の早い段階から鉢を決め、細心の配慮をもって培養していることが見てとれます

  まさに脱帽!です
  

杜松ミニ懸崖 樹髙5.5㎝

5 ↑の模様木よりも鉢持ち込みが古い感じです
  その古色感は、立ち上がりから幹筋にかけての木肌の味や、枝先の繊細さに現われていますね


6 幹径:鉢の間口の比率は約2:5、つまり1:2.5
  この作家にとってはこれでも余裕の鉢サイズなのでしょう

  構図や培養面からはもちろんですが、鉢写りに対する細かい配慮が
  この作家を真のミニ名人に押し上げている理由だと思います

さあみなさん、あなたも真の名人になるために
構図、培養、鉢写りの3セットを見直しましょう

2010年7月29日木曜日

水やりのタイミング

まったく長期の天気予報とはあてにならないもの

5月から6月にかけての日本列島は、日照時間が短く各地で豪雨の被害も多く
来るべき夏の気温は平年以下の、いわゆる冷夏と予想されていましたね

ところがいざ本番になってみると酷暑日の連続
盆栽人たちにとっては、例年以上に水やりに神経をとがらせる毎日となっております

言うまでもなく、水やり命のわれわれ盆栽人です
水やりに関することはどんなササイな知識や工夫であっても、いいことはさっそく学んで役に立てるべきですね

さてそこで、水やり方法となると、ついつい不足対策の方に傾きがちなりますが
今日は、反対の水やり過多を予知する簡単な方法を勉強しましょう

なおちなみに、盆栽人がなぜ冬の長期予報よりも、夏のそれを気にするかと言えば
やはり黒松・赤松類の芽切りの時期が関係してくるからですね

冷夏予想となれば、早めに実行し
暑い夏になりそうならば、もちろん遅めにずらすというわけです


数日前の明け方、わずかながらもにわか雨が降りました

朝になって日が昇り盆栽棚に日が当たりはじめ、そろそろいつもの水やりの時間になると
「ねー、おとうさん、水やったほうがいいんじゃない?」、すでにカミサンは腕まくりを始めています

「今朝は水をやらなくていい」と言う私に向かって、「そんなこと言ったって、もう乾いているよ、雨が降ったってちょっぴりだからさ!」
まるで宮本園を背負って立ってるみたいなでかい態度で、うるさく迫ってくるカミサン(かわいげネー)

そんなときには論より証拠、直接的な行動がいちばん説得力があります
黙って一鉢の盆栽を取りあげ、その湿った鉢底を見せ、水分たっぷりの水穴とその奥の用土を見せてやりました



鉢土の表面は乾いていても
未明に降ったわずかな雨の水分は、まだたっぷりと鉢底に痕跡を残しています



さらに追い打ちのもう一鉢



ここにも水分はたっぷりと残っています
これでは水をやる必要はありませんね

まだまだうちのカミサンは一人前にはほど遠い
水やりは一日何回という先入観に支配されているんですね

というわけで、以上のように

1 水の過不足は鉢土の表面だけではわからないことがあるので
2 鉢底や水穴、その奥の鉢土の湿り具合から判断するといい
3 それにより、鉢裏の蟻やナメクジやダンゴムシの発見など、副次的な効能もある

などなど、効果は抜群です

簡単なことですが
みなさんも面倒くさがらずに、ぜひ習慣にしてくださいね

これはうちのカミサンの教育にもさっそく効果があったようで
以来、鉢裏を観察している姿が何度か見られるようになりましたよ(笑)

2010年7月24日土曜日

楓・傷口癒合

昔の山取りを主体とした盆栽とは異なり、育てながら作り上げていくのが主流となった現代の盆栽では
制作過程で避けられないのが、やむを得ず生じる傷口の問題です

傷口は

1 放置するとその傷口から木質部まで腐り込む
2 特に木肌の美しさが鑑賞のポイントとなる雑木類においては、醜い傷口は鑑賞価値を下げる元となる

など、盆栽人にとっては頭の痛い問題です

「この枝は無駄だから切りたいね」
「いやいや、切らない方がいいよ、大きな傷ができちゃうから」

こんな会話はしょっちゅうですし
自分の心の中でも葛藤をしばしば経験しているのが盆栽人です

後になって、やっぱり切らなきゃよかった、とか
思い切ってあの時外しておいてよかった、などなど、この傷口の問題は盆栽人にとって永遠のテーマでしょう

さて今日は、あの時外しておいてよかった
そちらの嬉しい例をご紹介しましょう


現在の姿 楓 樹髙8.0㎝


昨年の後ろ姿

正面から見た姿はまことにいいのですが
裏枝が太りすぎていて、例えれば、背中に何かを背負っている感じ

ただこれだけ、この1本の枝さえ外せば、かなりまとまりのいい本格模様のミニサイズなのに・・・
でも幹経が3.0㎝なのに、その半分の1.5㎝くらいの傷口ができちゃうんですよ

ずいぶん迷ったんですが、傷が背中であることと樹勢がいいなどの理由で
今年の春に思い切って切りました


多めにたっぷりと塗り込んだカットパスターに、梅雨の頃からひび割れが見られるようになりました
これは、カットパスターの下で、傷口にカルスが形成されている証拠です


7月になってひび割れはますます目立つようになり、中から傷口の肉巻きがはじき出てくる勢いですね
こうなりゃしめたもの、中をのぞいてみましょう


ホホー、すごい勢いで傷口に肉が巻いてきています
測ってみると、当初直径1.5㎝あった大きな傷口が、現在はなんと0.6㎝と半分以下になっています


いちど全てのカットパスターをすっかり取り除きます
次に、まだ肉の巻いていない中心部だけにカットパスターを塗り直す

すでに肉の巻いた箇所に何時までも塗っておくと
盛り上がってコブ状になってしまう恐れがあるからです


状態から見て、今年中にさらに肉巻きは進み、かなり傷は小さくなるでしょう
このままで来春まで待ち、改めて肉巻きの内側をナイフで削り刺激を与えます

刺激を与えられて若返った傷口は、再び肉巻きの速度が速まるものなので
おそらく入梅前には完治の見込みです

では

2010年7月23日金曜日

くちなし正面変更

あえて定義すれば「株立ち」の樹形でしょう
甲羅状に発達した根元が力強く盛り上がって、主幹とそれを囲んだ子幹とがバランスよく立っています

出会ったときから、正面の変更案が頭に浮かんでいましたが
家に帰ってよくよく検討した結果、やっぱり最初の直感に従って実行することになりました


出会ったときの正面

甲羅の形や動きは申し分ありませんが
向かって左に立つ主幹がよく見えません


足元から観察すると、2本の→で示した利き枝が主幹の元あたりにあって
それが前枝なので、主幹の立ち上がりを隠してしまっています


つまり、上から見るとこうなります

上から↓が旧の正面で丸印が芯の部分
2で示した枝が利き枝(前枝)なので上の矢印方向から見た場合、この枝がじゃまになるのです

反対に、下の↑方向からの角度が新正面
1で示した利き枝が主幹のじゃまはしません


側面より見ます

右方向が旧の正面です
主幹をよく見せるためには、赤線のように利き枝(前枝)を切らねばなりません

すると、足元に意外に大きな傷を作ることになる
果たして大きな傷を作ってまで、こちらを正面にするだけのメリットはあるかどうかの損得勘定となりました


反対側をじっくりと観察

1 座元にボリューム感があり傷っけも感じられない
2 右の主幹のやや横下に利き枝もあって、主幹の立ち上がりをじゃましない
3 こちらの角度だと主幹にいい模様が感じられる

などなど、総合点でこちらへ軍配が上がりました


じゃまな不定芽を取り除き、主幹がすっきりと見えるようにしてみました
これなら座元に傷も作らずにすむし、正面変更決定ですね


新しい正面

座元の形もいいし、傷っけも少なく、足元がきれいな感じ
芯に模様があり、横に伸びた枝も利いています


くちなしは丈夫な樹種
多肥多水で育てます

今後は部分的な針金かけと切り込みにより
このような構図を念頭にれて仕上げます

2010年7月20日火曜日

杜松の切り込み

暖かい気候を好む杜松、もちろん、植替えは5月に入ってから行い

深い切り込みなども入梅から夏に向けて行います

それでは、杜松ミニの懸崖を教材にして
追い込み(切り込み)のポイントを勉強しましょう


樹髙7.0㎝の半懸崖式の杜松
5月に植替え、根づくまでのしばらくは新芽を摘まないでおいてあります

約1ヶ月半が過ぎたので、そろそろ追い込みをかけて樹形をしっかり整えましょう
現状では葉ガサが大きすぎて、せっかくの味のある細幹のよさが消されてしまっている


そこで赤線で囲んだ範囲を目安に思い切って輪郭線を縮めます
杜松を切り込む場合、木質化して芽当たりのない箇所から切ると、先端に芽が吹かない恐れがある

しかし、若い小枝の先端は芽当たりがなくともいい時期に切ればだいじょうぶ
少々の葉を残してどんどん切り込みましょう


樹冠部、差し枝、前枝、後ろ枝などが明確になり
細幹のおもしろい幹模様が浮き上がって見えるようになりました

このように、構図を簡明にするのが最大のポイント


剪定のあらかたが終わりましたが、ここにも培養上のポイントがあります
新葉の元に枯れた古葉がこびりついていますね

古葉が風通しや日照の妨げになっています
この古葉をピンセットできれいに取り除いてやること


古葉をきれいに掃除して出来上がりです
これ以後は現在の輪郭線を基本にし、適宜に芽摘みを行い姿を整えていきます


正面の拡大図


枝裏から見ます
きれいになっていますね

日光や風が十分に通って
小枝に芽が吹きやすくなります


約一週間が過ぎました
早くも小枝のあちらこちらに芽当たりが見られます


胴吹き芽の拡大図


胴吹き芽の拡大図

2010年7月9日金曜日

作る・出猩々

作り始めてからこの春で4年目に入った出猩々もみじ
その間にボディーは太って見違えるほどに逞しくなったのですが

節間が伸びやすいという性質に加え、仕立て鉢に入っているせいもあり
せっかくいい位置に吹いた芽も枝として使えないことが多く、なかなか苦労しています

それに正直なところ、最初のうちは欲目でいいところばっかり見えているんですが
4年も経つとアラも見えてきて、あれこれ考え過ぎも出てきます

そこで今年は、春一番の新芽は諦め
葉刈り以後の節間のつまった芽を使う作戦をたてました

まずはここらで一応の骨組みを作ってしまおうという魂胆です
雑木は改作が容易なので、気に入らなければまた改作すればいいんですから

以前の項を参考に


6/13 撮影

春一番の新芽は摘まず、伸しっぱなし


6/13 撮影

普通でいうと葉刈りの時期ですね
まるっきりの葉刈りではありませんが、切り込みを兼ねて葉も減らしました

この画像で見ると、出猩々の新芽の節間が長いのがおわかりですね
人気者の出猩々に名品が少ないのはこのせいなのです


6/23 撮影

フトコロから新芽が吹いてきましたね
これらの芽の中から、節間が短くてしかも元気のいい充実したもの、を枝として使う作戦です


どんなことをしても白線の内部で仕上げたいものです
白点のあたりの芽が動いて欲しいと思っているんですが、どうかな?


7/8 撮影

かなりの数の芽が動いて伸び始めました
葉が固まるのを待って、枝として使う芽と不要な芽とを取捨選択します

ところで、新芽にうどんこ病の出やすい梅雨時
その点に気をつけて培養します

ではこの次をお楽しみに

2010年7月8日木曜日

スクール速報・楓石付・梅もどき

持ち荒らした盆栽の骨格だけを利用し、以前とまったく違った姿への改作の魅力は
いちど味をしめると病みつきになるほどです

第一に、持ち荒らした素材は安価なので
うまくいったときのお得感は応えられませんな(笑)

もちろんうまくいかずに、安物買いのなんとやらになることもしばしばですが
ともく、骨格がしっかりしていて個性のある素材を物色するのが成功の秘訣です

さて、今日は常連のクロちゃんの改作作品をご紹介しましょう
寡黙で飄々とした風貌に似合わず、彼の発想は個性的でなかなか大胆です



私が半ば放り出して、待遇の悪くなった盆栽たちの中にもぐっていた楓の石付(樹高13cm)
3~4年前にクロちゃんが見つけ出した掘り出し物です

大きな傷がなかったのと、石を半ば呑み込んでしまった迫力とおもしろさ
さらに持ち込みの古い木肌の味に目をつけたのでしょう

そして、みごとに復活!
復活というより、再デビューの大ヒットといったほうが当たっています



石を呑み込みかけた根を幹に見立て、左と右に利き枝を配した構図がいいですね
変形の面白さに本格模様木の要素も加わって、堂々たる貫録です

クロちゃんが先週のスクールで葉刈りした姿ですが
赤点で示した二の枝の表情が特に目立っていますね

以前の姿を知っている私だけに
みなさんよりもよけいに、この楓のよさを感じるのでしょうね

枝に力と繊細さが加わるにはもう2~3年かかるでしょうが
クロちゃんならば安心です、きっとそこまでもっていくでしょう、期待しています



後姿



クロちゃんの改作作品・梅もどき(樹高16cm)

この梅もどきの以前の姿は知りませんが、クロちゃんの説明によると
手にれてから木の裏表を取り替えて作りこんだそうです

実物を見ると、根元の座の形や動きはもちろん
幹立ちのバランスまで検証しても、現在の正面が正解のようです

梅もどきという樹種は、根が綿のように軟らかく細いため
古木になるとこまめでていねいな培養が必要になります

この梅もどきも、枝先や木肌にかなりの古色感がにじみ出てきていますが
左の輪郭線のできあがりや、右のハネ出し部分のほぐれが今一息ですね

気合いを入れてがんばってください
梅もどきの株立ちとしては逸品レベルに達しています

みなさんも掘り出し物の素材を見つけ出し
改作にチャレンジしてください、楽しいですよ

土払い品500鉢

10日ほど前に隣市の某愛好家さんから土払い(どばらい)のお話しがあって引きうけることにしました。盆栽界で土払いというと、盆栽や鉢などすべての持ち物の売買のことをいいます。 プロでもアマチュアであっても、生き物(盆栽)の後継者がいない場合は売り払うか、さもなくば枯らすことになります...