2010年10月7日木曜日

五葉松・古葉取り

せっかちの愛好家は、9月に入ると五葉松の古葉取りを始めますが
古葉取り作業は、春の新葉がさらに固まった10月に入ってからが理想的です

しかし、黒松のように短葉法をかけないため、あまりに早すぎることはありませんから
新葉をいためないように気をつけながら始めて下さい

ただし、黒松はやはり11月に入ってから行いましょう
黒松の場合は、まだまだ短葉法以後の新葉が完全に固まっていませんね


昨年に古葉取りを行わなかった五葉松先端


一番の元についている葉は一昨年の古葉(三年葉)
中間が昨年の古葉(二年葉)

先端の新しい葉が今年出た新葉
つまり三年分の葉がついているわけです

このように三年分の葉をつけたままでおくと、いろいろな障害のもとになります

1 先端の新芽に行くはずの養分が分散してしまう

2 フトコロに日光がとどかず、通風も悪くなり、フトコロ芽の発育の妨げになる

3 葉の量が多すぎて根に多大な負担をかけている

4 以上の原因で、手入れの悪い五葉松の大半は、外側の芽だけが残り
  フトコロがガラガラになっていますね


作業の実際

一年目の新葉のみ残して古葉を取り除く
ただし、指先で引き抜くのは厳禁、必ず図のようにハサミで元の数ミリを残して切り取るようにします

このようにすれば、元から新しい芽が吹く可能性があるからです
手間はかかりますが、必ず実行して下さい

ちなみに、↑の図の赤点は取り忘れの古葉です
これも残らず切り取ります


作業完成
一年葉だけを残してすべて切り取りました

このように葉の量を減らすことにより、根の負担は減り
わずかに残された古葉の元から、胴吹き芽を出す可能性が高くなります

いいことだらけの古葉取り作業

では実行!!

2010年9月29日水曜日

捩幹ざくろ8年生

人気樹種のわりに、捩幹ざくろの小品やミニはあまり市場に出回っていません
まして幹が太くてサイズのつまった、いわゆるずんぐりむっくりタイプの力強いミニの優品などは皆無です

大物盆栽においてもそれは同様であり、小品やミニの世界を含めて
捩幹ざくろの盆栽は幼いころからじっくりと時間をかけての気長な培養によってのみ、優れた作品となり得るのです

ですから、畑作りの素材は一見して迫力はあっても、優品に育て上げるのはまず不可能といえるでしょう
そして、その理由は捩幹ざくろ特有の性質にあります

では、捩幹ざくろを仕立てる課程で非常に大切な特性について
ここでしっかり勉強しておきましょう


挿し木から8年間の培養管理による捩幹ざくろの素材
捩幹ざくろの場合、このように幹に傷っけのないことが優品への第一条件となります



そろそろ捩幹特有の捩れが幹や枝に見られるようになりました



捩幹ざくろは幹も枝も、成長とともに左方向(反時計回り)に捩れる性質を持っています
さらに、水吸いの縦方向の独立性が強く、横方向、つまり両隣からの養分の移動がかなり少ないのです

ですから、例えば他の盆栽樹種(もみじ・かえで)などでは、大きな枝を切った場合でも
葉で作られた養分や根から吸い上げた水分などが、上下左右の四方から傷口の治癒のために応援してくれます

しかし、捩幹ざくろの場合は、左右の水吸いに知らんぷりされて援助なし
太い枝を切れば、盆栽の場合ほとんど例外なく、その下方が螺旋状に焼け込んでしまうのです



赤線で太い枝を切った場合、その枝の上部からの養分は期待できず、まして螺旋状につながった根の水揚げは止り
さらに左右両隣からの援助なもなく、幹肌と形成層は図のように螺旋状に焼け落ちてしまいます

以上の理由で、捩幹ざくろは他の樹種のように、幹の切り戻しによる素材作りが不可能なので
ずんぐりむっくり樹形の太幹小品やミニが皆無なのです

ご理解いただけましたか?

とはいえ、捩幹ざくろは盆栽樹種としての美点をたくさん持っていて
昔からの人気樹種であります

美点をあげれば

1 幻想的な感じさえする幹の捩れと古色感あふれる幹肌の美しさ
2 鮮やかな春の芽だしと寒樹の繊細な枝先
3 夏から秋にかけての開花と実成り

ということで、捩幹ざくろの培養の勘所は

1 まず、優れた素材、とくに太い枝を切る必要のないもの、それに出会うこと
2 枝先に勢いをつけ過ぎないよう、徒長枝を早めに取り除き、じっくりと育てる
3 冬期の防寒に気をつけ、培養期には多肥多水で育てる

以上を守れば比較的に丈夫な樹種です
チャレンジしてみて下さい

ではまた

2010年9月17日金曜日

楓甲羅吹き素材作り

春のうちから目につけておいた楓の甲羅吹き素材
選り抜いて5鉢ほど仕入れてきました

太らせるために芯は伸ばし放題にしてあるので、高さは1メートルもあり
鉢穴から外へ伸びた根が鉢底一面に平べったく広がり、棚板に食い込む勢いでした

甲羅吹きは、雑木類、とくに楓によく見られ
ダイナミックな盤状の根と幹立ちの優雅さを同時に味わえるため、人気のある樹形です


背取りという特殊な取り木法によって作られた甲羅吹き素材

勢いよく伸ばし放題にしたので、今年の春見たときよりも根元から幹筋がずいぶん太って見違えるようです
真っ白なきれいな根からも、この楓の健康なようすがわかります


とりあえず長い枝を仮切りして甲羅や根元の掃除をし、樹形の構想を練る
むっくりとボリューム感のある甲羅が魅力ですが、他にもいくつか見どころはあります


わかりやすいように骨格だけの画像にして検証してみよう
ちなみに、主幹の赤点までの高さは5.0㎝、甲羅の間口は7.0㎝、完成予想樹髙は8.0㎝です

1 まず、甲羅の形と動きがいい

2 特に目立つのは、向かって右の主幹の下部の根の動きが抜群です

3 主幹の曲が強くて力がある

4 副幹の動きも主幹にうまく調和している

5 そこで、双幹体の樹形をイメージしてみる、これが妥当な構想でしょう


骨格のイメージ図

1 現在の長すぎる枝のまま過ごし、来春に主要ボディーだけを残して切り込みます

2 主幹はちょうどいいところに芽当たりがありますが、副幹は赤点の位置からは芽が出にくいでしょう
  ですから、おそらくは呼び接ぎによって芯を作ることになるので、呼び接ぎ用の徒長枝を残すことを忘れないように

3 主幹の一の枝は現在の枝を使いますが、その他イメージ図にない裏枝などが必要になれば
  胴吹き芽を待つか、さもなければ呼び接ぎをするかして枝順を作り込んでいきます

2010年9月7日火曜日

異常気象の水やり

みなさん、今年の夏の暑さは、盆栽はおろか人間様にとっても、
まさに生き残りをかけた戦いになりましたね

4,5月ごろからぐずついた天気が続いき梅雨に入るころには
来るべき夏は冷夏との長期天気予報でした

それが一転し酷暑日が続き始めたころのことは
水やりのタイミングとして7月29日のつれづれ草に書きましたね

今振り返って読んでみると、あのころの盆栽屋にはまだ溶融が感じられました
それが証拠に、「水やり過多」を予知する簡単な方法などを語ってります

ところが8月に入ったころ、ますます激しくなる異常な気候に危険を感じた私は
我が園の「水やり助手」として貴重な戦力であるカミサンに厳しく命じました

その要旨は

1 今年に限っては、「乾いたらやる」という水やりの原則は無視してもいいから
  日中の水は乾く前に早め行うようにして、決して切らしてはならない

2 故に、早朝の第1回目の水やりのあと、正午までの午前中に第2回目の水やりを行う
  その際に、まだ乾いていない鉢があっても、気にせずに棚全体にたっぷりとやる

  以上2回の十分な水やりにより、気温が一番高い正午から午後3時ごろの時間帯の水切れを
  最小限で食い止められる

3 第3回目は午後3~4時ごろを目安とし、今度は各鉢の乾き具合をよく観察しながら
  水やりの量を調節する

  また、それ以後、たとえば午後6時ごろに乾いた鉢があったとしても、もう驚くことはない
  散水ホーズは使わずに、如雨露で個別に「拾い水」を少々やるにとどめる

  日が落ちてからの葉水もけっしてやらない

  この第3回目以降の水管理により、夜間でも棚板はさっぱりと乾き
  水やり過多を防ぐことができるぞ

でした



朝の8次ごろ、棚全体にたっぷりと水やり


午前中にもう一回

昨年までは2回目の水やりは午後で、乾いた鉢と乾いていない鉢を見極めながらやりましたが
今年の気候ではそんなゆとりはありませんね、早めの時間帯にひたすらたっぷりです

ただし、↑のNo.3のように、第3回目の水やりでは「乾いたらやる」の原則に立ち返り
1日分の水分の調整をし夜間の過湿を防ぎます

しかし、そうはいっても日中の水やりの時間帯や回数は
お勤めのみなさんには無理なことですね

ですから、自動灌水の時間帯を調節したり、帰宅後の夜間の水やりをやや少なめにし
朝の水やりに重点を移すなど、少しでも意識を変えていくことが大切ですね

というわけで、私の強烈な命令が功を奏したらしく、珍しくもうちのカミサンの意識にも変化が見られ
昨年までのように、夕涼みがてらの夜の「葉水」で棚をびっしょりに濡らすことなどもしなくなり


この厳しい夏にもかかわらず、盆栽の作柄にもかなりのいい効果が見られました

では

2010年8月25日水曜日

真柏板幹

強く屈曲した板幹(いたみき)は、山取り真柏の芸の見どころのひとつです
板状に薄くなったサバ幹が強く屈曲し、その両側か左右どちらかに水吸いが絡んでいるのです

その板幹も人工によって作り出しことができます
もちろん一気に作ったものでは、なかなか天然の味には及びませんが

ある程度時間をかけて気長に作れば
かなりの髙レベルで、天然に負けないだけの見せ場を作ることも可能です


小品真柏の幹の一部分が板幹になっているで、これを教材にしてご説明しましょう

A点まで一本で捻転しながら上がってきた水吸いが、B点で分岐して二本になりました
CとDに分れた水吸いは、それぞれ生きるための水揚げに努力してきました

というのは、↓の図(裏側から)のように、この部分は板幹になっており水吸いが狭いので
自らを太らせて水揚げの量を増やさなければ生きていけなかったわけです

がんばりの結果、今ではCとDの水吸いはA一本分よりも多くの水を揚げることが可能になったようです
水吸いの発達具合がそれを証明していますね

ちなみに、このような二股に分岐した場合
普通は曲の外側や上側を通る水吸いの方が発達しやすいものです


板シャリの裏側の図


この好機をとらえ両側の水吸いを細く削り込みましょう
削り込むことによって、板幹の幅はさらに広がり力強さがより強調され

赤線で示した部分がさらに太って、近い将来、さらに削り込むことが可能になります
このようなことを何度も繰り返していくうちに、天然の板シャリの味が出てきます


また、→で示した左の水吸いだけを残し、右の水吸いをサバにしてしまう構想も成り立ちますね
それによって板幹の表面に縦方向に起伏が生じ、自然に枯れ込んだような木目の味わいが期待できます


裏側からも思い切って削り込みましょう
赤と白の※の水吸いには段差ができますから、これも自然に枯れ込んだような木目の味わいとして、うまく利用したいものです


水吸い彫刻後の正面


彫刻後の裏面


彫刻後の側面、右が正面で左が裏面です
側面から見るとみごとに薄い板状の幹であることがわかりますね

さて、もう一点

皮を剥いだばかりの木質部は削りにくいので
しばらくの間乾燥させてからゆっくりと仕上げにかかりましょう

みんさん、手手近に持ち荒らした真柏の素材はありませんか
普段からそれらを練習台にして、彫刻の腕を磨いておきましょう

2010年8月23日月曜日

真柏シャリ幹

山取り真柏のシャリ幹と水吸いの芸を人工で作り出すには
テクニックとともに少々の年月が必要です

年月といっても天然自然界の気の遠くなるような星霜ではなく
小品盆栽なら3~5年ほどで、盆栽時間としてはわずかなものです

それより、シャリやジンを作り出す実際の技巧とその課程を
わずかな画像と拙い文章で分かり易くお伝えするほうが難しいようです

というわけで、系統だった勉強というわけにはいかないので、折にふれて小出しに取りあげ
その都度にみなさんの技術の参考にしていただければと思っています



文人風の真柏の立ち上がりからの幹の部分画像

かなり古い時期にジン作りをされたもので、板状に突起したシャリ幹と水吸いがうまく捻転していますが
この2年ばかり樹勢がいいので、かなり水吸いの部分が太くなってきました

このままでは水吸いがさらに盛り上がってサバを包み込んでしまい
サバ幹の野性味が薄れてしまいます

削り込む予定部分にマジック(白墨でもよし)で印をつける


裏側にも印をつける
入り込んで捻転している水吸いは水道(みずみち)を間違えないようにしましょう



つまり、白←の水道(みずみち)は捻転して上の白←につながり
赤←は同じく赤←につながっています

真柏の水道は縦方向だけでなく、横方向にもかなりの融通性をもっていますが
いちどきのあまり極端な水道の変更は、根と枝葉間の水の往来を断ってしまうので、ご注意!


印に沿って縦にナイフを入れ皮を剥く


皮を剥いた水吸いの部分はかまぼこ形にもりあがっているので丸ノミで修正
白←の部分は凹面で、赤←の部分は凸面になります

このように縦の木目に沿うようにし露出した木質部に凹凸をつけると
自然なシャリ芸が演出できます


↑で示した部分にも要注意

シャリの下部の地面に接する部分は、なるべくけずらないようにしましょう
つまり、根張りの部分を少々残しておけば、シャリが腐れ込む心配がないのです


背中の部分もかなり剥きました

赤印で示した新しいシャリの部分は、かまぼこ形に盛り上がっており
白印の古いシャリのぶぶんとはかなり段差があります

この段差がシャリ味となり、自然の風雪に耐えて生き抜く生命力を表現しています
たとえばこの両者がいちどきに剥いたシャリであったなら平板に見えて、味気ないものとなってしまいますね

ところで皮むきの適期です

水揚げの盛んな入梅から夏にかけてが最高
すぐに残された傷口にカルスが上がってきます

2010年8月13日金曜日

アマチュア・ミニ名人

まだ直接お目にかかったことはないが
私が内心敬服しているアマチュア作家がいらっしゃる

年に数回、私は人づてに作品にお目にかかるのだが
たくさんのミニ盆栽に混じっていても、それらは特別の輝きをもっているのですぐに目に入ります

先月にもフラリと仕入れに出かけた先の業者の棚に、後光の差したような逸品数点が目についたので
抜き出して価格の交渉に入って求めたら、なんとそれらがすべがその作家の作品であった

それらは、そこそこのミニ盆栽がずらっと並んだ多数の中に混じっていても埋没することなく
特別に光り輝いていたので即座に私の目を惹きつけました

やはり魅力のある盆栽は、こちらが目を皿のように探さなくとも
自ら輝いてその存在をアピールするので、私たちの視線はたちまち吸い寄せられてしまうのですね

さてそれでは、これら作品の魅力の秘密はどこにあるのでしょう
どうしたらこのようにひとの視線を吸い寄せる輝きがでるのでしょうか

この作家のミニ盆栽作品には

1 大胆でスケールの大きな構図
2 持ち込みの古さと、的確な培養管理
3 盆栽を引き立てる鉢の選定

の優れた三大特徴があります

もちろん他にも優れた点はありますが
この三点が他に抜きん出ています


杜松ミニ 樹髙5.5㎝

1 大胆に傾斜をもった立ち上がりと、向かって左の利き枝の力関係が絶妙のバランスを保っています
  まさに緊張感と動きのあるスケール大きな構図です

2 枝葉の長さはかなり抑制されながらも、植物としての生命力に満ちていますね
  この小さい目の鉢で、これほどの作柄を維持するにはかなりの努力と工夫が必要です


各点は1.0㎝単位です

3 約4.0㎝に近いボリュームのある立ち上がりですが、使用している鉢の直径は7.0㎝未満の八角
  幹径:鉢の間口の比率は約1:2に近く、鉢のサイズを目一杯しぼっていますね

  このミニ杜松がこれほどの力量感を発揮しているのは、この大胆な鉢使いによるものです
  また奥行きにも考慮して丸に近い八角鉢とし、培養面への配慮も感じられます

4 鉢に収まっている感じに、小さな鉢に押し込んだような無理がありませんね
  このことは盆栽を鑑賞する側からすると、かなり大切なポイントです
 
  展示会用の急場の仕事ではなく、普段からこの小さな鉢の中ではつらつと生気を放っている
  制作の早い段階から鉢を決め、細心の配慮をもって培養していることが見てとれます

  まさに脱帽!です
  

杜松ミニ懸崖 樹髙5.5㎝

5 ↑の模様木よりも鉢持ち込みが古い感じです
  その古色感は、立ち上がりから幹筋にかけての木肌の味や、枝先の繊細さに現われていますね


6 幹径:鉢の間口の比率は約2:5、つまり1:2.5
  この作家にとってはこれでも余裕の鉢サイズなのでしょう

  構図や培養面からはもちろんですが、鉢写りに対する細かい配慮が
  この作家を真のミニ名人に押し上げている理由だと思います

さあみなさん、あなたも真の名人になるために
構図、培養、鉢写りの3セットを見直しましょう

土払い品500鉢

10日ほど前に隣市の某愛好家さんから土払い(どばらい)のお話しがあって引きうけることにしました。盆栽界で土払いというと、盆栽や鉢などすべての持ち物の売買のことをいいます。 プロでもアマチュアであっても、生き物(盆栽)の後継者がいない場合は売り払うか、さもなくば枯らすことになります...