2010年10月22日金曜日

初級・中級盆栽集中講座(1):雑木類の新芽摘み

超初級から中級くらいまでを中心に(たまには上級編もまじえて)盆栽の手入れに関するご指導する初級・中級盆栽集中講座シリーズです。

  • 時期:3月下旬から5月上旬頃まで(二番芽,三番芽と吹いてきたら夏まで続けることもある)
  • 適用樹種:もみじ類・楓類・けやき・姫しゃら・ブナ・赤芽ソロ・カナシデなど(花や実よりも主として枝先の細かさを鑑賞する樹種)
  • 目的:小枝をふやす・徒長させない・内側の枝(ふところ枝)を守る
  • 道具:剪定小鋏・ピンセット
  • レベル:超初級から達人まで絶対必要な盆栽技術(芽摘みなくして盆栽なし!)
  • ここがポイント:内側のふところ芽は充分力をつけてから摘むか鋏で切るようにする

実技教材・山もみじ三幹


新芽がほころんできた
今がチャンスです
もう少し伸びてからでは遅すぎる
理想は鋏を使わず、ピンセットで摘み取れる新芽の柔らかいときです


ほころんだ新芽をよく見るとたいがい三節あります
元の一節を残して先端の二節を摘みます
もっと伸ばしたい枝は一節だけ摘んでもよい


先端と手前の二節がピンセットで簡単に摘み取れました


枝によって芽吹きが早いところと遅いところがあります
開いた芽をあちことさがしては摘みます

ここにもありました
ピンセットの先でほころびかけた新芽をさぐりなが、らどんどん摘みます
ふところ芽は外側の芽に比べて弱いのでなるべく摘みません
これがポイントです


外側の強い芽は全て摘みました
これでまだほぐれていない芽に勢いがつきます
この作業を何日かおきに繰り返します
全部の芽が開いて芽摘みが終わった頃には
若葉がそろって、新緑の季節になります

消毒
薬剤 殺虫剤・オルトラン乳剤(他にマラソンやスミチオンの乳剤も可)
方法 250倍から500倍に薄めて噴霧器で散布(小さいものはバケツに入れた溶液に逆さまに漬けてもいいですよ)
回数 月に一回以上4月上旬から10月末まで
ここがポイント 葉の表面と裏面、幹枝にたっぷりと(少しくらい鉢の表面に沁みても大丈夫です)
希釈倍数を間違えないこと
例・1000倍液とは水1,000ccに乳剤1cc
500倍液とは水500ccに乳剤1cc
ですよ!
もう一つポイント 濃い溶液で回数が少ないよりも、薄目でちょくちょくの方が効き目があって安全
朝よりも夕方にやるとよい(温度が下がっていくので薬害がおこりにくい)

2010年10月15日金曜日

姫柿について

私たちが「ローヤガキ」という植物名を知ったのは、かれこれ30年も前になるでしょうか
はじめは信じられなかったけれど、よくよく見ても黄色や橙色の小さな実は確かに柿そのもの

デビュー当初はよくあることで、珍品種として一部盆栽人の投機の対象にもなり
棒切れのような根伏せ苗が1万円もした時期がありましたが

すでにそのころには盆栽市場もかなり発展成熟していたため
比較的冷静に価格の落ち着くのを待つ姿勢の愛好家が多かったようです

それもそのはずで、まずは根伏せや実生での繁殖が容易であることがすぐに知れ渡ったし
肝腎の盆栽樹形としての可能性がまだ未知数だったからです

その老爺柿(以後姫柿と呼ぶ)が徐々に普及するとともに量産の時代は終え
こんどは実生による実の色彩や形の変化に流行の矛先が向かい始めました

やはり本格樹形に仕立てられるかどうかが、盆栽人の最大の関心事なので
単なる園芸品種で終わるか、盆栽樹種になりうるかを見極めないことには、爆発的な流行までに至りませんね

私自身も20年ほど前、人差し指くらいの幹の太さで樹髙12㎝ほどの幹模様も枝順もいい
当時として希にみる小品の逸品を手に入れたことが一度ありますが

そのほかには唸るような名木に接したことがないので
姫柿という樹種にさしたる熱を感じたことはありませんでした

余談ですが、その小品姫柿はバブル絶頂期とはいえ、品種的に希少なこともあって
なんと10万円もしたのを、はっきり憶えています(2万円の利益をのせて同業者に売った記憶もある)

そのように、姫柿にはかなり無感動のままの約30年でしたが
どうしたわけかこの数年、お、お、お、というような将来性のある小品や中品クラスにお目にかかる機会が増えてきました

考えればそれもそのはずで、デビューからの年月を考えれば、量的にはかなり以前から飽和状態になっている姫柿のこと
何年も前から今日を見越して、量より質の生産体制に転換した生産者も多いはずです

顧みると、珍品種として鳴り物入りで盆栽に登場した樹種であっても
年月が経ち量的な飽和状態になった時期に、本格盆栽が登場しないことには、やがて見捨てられ消えゆく運命にあるようです

その観点からすると、姫柿は盆栽界に確実に残れるといえるでしょう
幾多の盆栽人の努力により培養法も進歩し、小品や柔らかな模様木樹形や文人樹形に見るべきものが確実に増えてきているからです


姫柿(紅宝樹)

親しい市内の愛好家が根伏せから10数年の歳月をかけた三幹
幹に傷っけのない柔らかな幹立ちがみごとです


もみじや楓のような雑木の風情
枝順も端正につくられたやさしい風情が見どころです


いわゆる赤実という品種
秋の深まりとともに真っ赤に色づきます


拡大図

姫柿の培養のポイント

1 多肥多水で育てる

2 植替えは3~4月に最適(9~10月も可)

3 剪定は春植替えと同時に行う

寒さにも強く強壮な樹種です

では

2010年10月14日木曜日

秋の仮剪定・楓

太らせる目的で、春から夏にかけて徒長させていた枝も
秋風の吹く頃になると伸びもとまってくると、そろそろ切りたくなる

やはり盆栽人は、常に清潔感とさっぱり感を求めているようで
目的を達したとたんに初期の目的は忘れ、ハサミを持ち出したくなるようです

しかしみなさん、決して慌ててはいけません
できるだけ11月の初旬ごろまでは我慢してください

理由は二つです

1 秋の早めに切ると、先端に再び芽が吹き、その芽が充実しないうちに寒さが来る

2 関東地方では、10月いっぱいから11月の中旬ごろまではまだ活動期ですから
  せっかくの太りが中断されてしまう


あまりに長すぎるため、9月中旬にしかたなく切った楓素材
上記の理由を考慮に入れて、図のようにうーんと長めに仮切りしておきましたところ

案の状、矢印の箇所に新しい芽が吹いてきました
でも、心配はいりません、これくらい長めに残しておけば、冬期に一節くらい凍えても素材の本体には影響なしです


新しく吹いてしまった芽を拡大してみましょう
ほら、ご覧下さい

この新芽が充実しないうちに寒さがやって来ては
それはかわいそうなことになりますね

落葉樹全般にいえることです
初心者の方々、気をつけて下さいね

2010年10月7日木曜日

五葉松・古葉取り

せっかちの愛好家は、9月に入ると五葉松の古葉取りを始めますが
古葉取り作業は、春の新葉がさらに固まった10月に入ってからが理想的です

しかし、黒松のように短葉法をかけないため、あまりに早すぎることはありませんから
新葉をいためないように気をつけながら始めて下さい

ただし、黒松はやはり11月に入ってから行いましょう
黒松の場合は、まだまだ短葉法以後の新葉が完全に固まっていませんね


昨年に古葉取りを行わなかった五葉松先端


一番の元についている葉は一昨年の古葉(三年葉)
中間が昨年の古葉(二年葉)

先端の新しい葉が今年出た新葉
つまり三年分の葉がついているわけです

このように三年分の葉をつけたままでおくと、いろいろな障害のもとになります

1 先端の新芽に行くはずの養分が分散してしまう

2 フトコロに日光がとどかず、通風も悪くなり、フトコロ芽の発育の妨げになる

3 葉の量が多すぎて根に多大な負担をかけている

4 以上の原因で、手入れの悪い五葉松の大半は、外側の芽だけが残り
  フトコロがガラガラになっていますね


作業の実際

一年目の新葉のみ残して古葉を取り除く
ただし、指先で引き抜くのは厳禁、必ず図のようにハサミで元の数ミリを残して切り取るようにします

このようにすれば、元から新しい芽が吹く可能性があるからです
手間はかかりますが、必ず実行して下さい

ちなみに、↑の図の赤点は取り忘れの古葉です
これも残らず切り取ります


作業完成
一年葉だけを残してすべて切り取りました

このように葉の量を減らすことにより、根の負担は減り
わずかに残された古葉の元から、胴吹き芽を出す可能性が高くなります

いいことだらけの古葉取り作業

では実行!!

2010年9月29日水曜日

捩幹ざくろ8年生

人気樹種のわりに、捩幹ざくろの小品やミニはあまり市場に出回っていません
まして幹が太くてサイズのつまった、いわゆるずんぐりむっくりタイプの力強いミニの優品などは皆無です

大物盆栽においてもそれは同様であり、小品やミニの世界を含めて
捩幹ざくろの盆栽は幼いころからじっくりと時間をかけての気長な培養によってのみ、優れた作品となり得るのです

ですから、畑作りの素材は一見して迫力はあっても、優品に育て上げるのはまず不可能といえるでしょう
そして、その理由は捩幹ざくろ特有の性質にあります

では、捩幹ざくろを仕立てる課程で非常に大切な特性について
ここでしっかり勉強しておきましょう


挿し木から8年間の培養管理による捩幹ざくろの素材
捩幹ざくろの場合、このように幹に傷っけのないことが優品への第一条件となります



そろそろ捩幹特有の捩れが幹や枝に見られるようになりました



捩幹ざくろは幹も枝も、成長とともに左方向(反時計回り)に捩れる性質を持っています
さらに、水吸いの縦方向の独立性が強く、横方向、つまり両隣からの養分の移動がかなり少ないのです

ですから、例えば他の盆栽樹種(もみじ・かえで)などでは、大きな枝を切った場合でも
葉で作られた養分や根から吸い上げた水分などが、上下左右の四方から傷口の治癒のために応援してくれます

しかし、捩幹ざくろの場合は、左右の水吸いに知らんぷりされて援助なし
太い枝を切れば、盆栽の場合ほとんど例外なく、その下方が螺旋状に焼け込んでしまうのです



赤線で太い枝を切った場合、その枝の上部からの養分は期待できず、まして螺旋状につながった根の水揚げは止り
さらに左右両隣からの援助なもなく、幹肌と形成層は図のように螺旋状に焼け落ちてしまいます

以上の理由で、捩幹ざくろは他の樹種のように、幹の切り戻しによる素材作りが不可能なので
ずんぐりむっくり樹形の太幹小品やミニが皆無なのです

ご理解いただけましたか?

とはいえ、捩幹ざくろは盆栽樹種としての美点をたくさん持っていて
昔からの人気樹種であります

美点をあげれば

1 幻想的な感じさえする幹の捩れと古色感あふれる幹肌の美しさ
2 鮮やかな春の芽だしと寒樹の繊細な枝先
3 夏から秋にかけての開花と実成り

ということで、捩幹ざくろの培養の勘所は

1 まず、優れた素材、とくに太い枝を切る必要のないもの、それに出会うこと
2 枝先に勢いをつけ過ぎないよう、徒長枝を早めに取り除き、じっくりと育てる
3 冬期の防寒に気をつけ、培養期には多肥多水で育てる

以上を守れば比較的に丈夫な樹種です
チャレンジしてみて下さい

ではまた

2010年9月17日金曜日

楓甲羅吹き素材作り

春のうちから目につけておいた楓の甲羅吹き素材
選り抜いて5鉢ほど仕入れてきました

太らせるために芯は伸ばし放題にしてあるので、高さは1メートルもあり
鉢穴から外へ伸びた根が鉢底一面に平べったく広がり、棚板に食い込む勢いでした

甲羅吹きは、雑木類、とくに楓によく見られ
ダイナミックな盤状の根と幹立ちの優雅さを同時に味わえるため、人気のある樹形です


背取りという特殊な取り木法によって作られた甲羅吹き素材

勢いよく伸ばし放題にしたので、今年の春見たときよりも根元から幹筋がずいぶん太って見違えるようです
真っ白なきれいな根からも、この楓の健康なようすがわかります


とりあえず長い枝を仮切りして甲羅や根元の掃除をし、樹形の構想を練る
むっくりとボリューム感のある甲羅が魅力ですが、他にもいくつか見どころはあります


わかりやすいように骨格だけの画像にして検証してみよう
ちなみに、主幹の赤点までの高さは5.0㎝、甲羅の間口は7.0㎝、完成予想樹髙は8.0㎝です

1 まず、甲羅の形と動きがいい

2 特に目立つのは、向かって右の主幹の下部の根の動きが抜群です

3 主幹の曲が強くて力がある

4 副幹の動きも主幹にうまく調和している

5 そこで、双幹体の樹形をイメージしてみる、これが妥当な構想でしょう


骨格のイメージ図

1 現在の長すぎる枝のまま過ごし、来春に主要ボディーだけを残して切り込みます

2 主幹はちょうどいいところに芽当たりがありますが、副幹は赤点の位置からは芽が出にくいでしょう
  ですから、おそらくは呼び接ぎによって芯を作ることになるので、呼び接ぎ用の徒長枝を残すことを忘れないように

3 主幹の一の枝は現在の枝を使いますが、その他イメージ図にない裏枝などが必要になれば
  胴吹き芽を待つか、さもなければ呼び接ぎをするかして枝順を作り込んでいきます

2010年9月7日火曜日

異常気象の水やり

みなさん、今年の夏の暑さは、盆栽はおろか人間様にとっても、
まさに生き残りをかけた戦いになりましたね

4,5月ごろからぐずついた天気が続いき梅雨に入るころには
来るべき夏は冷夏との長期天気予報でした

それが一転し酷暑日が続き始めたころのことは
水やりのタイミングとして7月29日のつれづれ草に書きましたね

今振り返って読んでみると、あのころの盆栽屋にはまだ溶融が感じられました
それが証拠に、「水やり過多」を予知する簡単な方法などを語ってります

ところが8月に入ったころ、ますます激しくなる異常な気候に危険を感じた私は
我が園の「水やり助手」として貴重な戦力であるカミサンに厳しく命じました

その要旨は

1 今年に限っては、「乾いたらやる」という水やりの原則は無視してもいいから
  日中の水は乾く前に早め行うようにして、決して切らしてはならない

2 故に、早朝の第1回目の水やりのあと、正午までの午前中に第2回目の水やりを行う
  その際に、まだ乾いていない鉢があっても、気にせずに棚全体にたっぷりとやる

  以上2回の十分な水やりにより、気温が一番高い正午から午後3時ごろの時間帯の水切れを
  最小限で食い止められる

3 第3回目は午後3~4時ごろを目安とし、今度は各鉢の乾き具合をよく観察しながら
  水やりの量を調節する

  また、それ以後、たとえば午後6時ごろに乾いた鉢があったとしても、もう驚くことはない
  散水ホーズは使わずに、如雨露で個別に「拾い水」を少々やるにとどめる

  日が落ちてからの葉水もけっしてやらない

  この第3回目以降の水管理により、夜間でも棚板はさっぱりと乾き
  水やり過多を防ぐことができるぞ

でした



朝の8次ごろ、棚全体にたっぷりと水やり


午前中にもう一回

昨年までは2回目の水やりは午後で、乾いた鉢と乾いていない鉢を見極めながらやりましたが
今年の気候ではそんなゆとりはありませんね、早めの時間帯にひたすらたっぷりです

ただし、↑のNo.3のように、第3回目の水やりでは「乾いたらやる」の原則に立ち返り
1日分の水分の調整をし夜間の過湿を防ぎます

しかし、そうはいっても日中の水やりの時間帯や回数は
お勤めのみなさんには無理なことですね

ですから、自動灌水の時間帯を調節したり、帰宅後の夜間の水やりをやや少なめにし
朝の水やりに重点を移すなど、少しでも意識を変えていくことが大切ですね

というわけで、私の強烈な命令が功を奏したらしく、珍しくもうちのカミサンの意識にも変化が見られ
昨年までのように、夕涼みがてらの夜の「葉水」で棚をびっしょりに濡らすことなどもしなくなり


この厳しい夏にもかかわらず、盆栽の作柄にもかなりのいい効果が見られました

では

土払い品500鉢

10日ほど前に隣市の某愛好家さんから土払い(どばらい)のお話しがあって引きうけることにしました。盆栽界で土払いというと、盆栽や鉢などすべての持ち物の売買のことをいいます。 プロでもアマチュアであっても、生き物(盆栽)の後継者がいない場合は売り払うか、さもなくば枯らすことになります...