2003年8月31日日曜日

竹本辰砂

竹本隼太は幕末の人で、4千石の旗本であったそうです
維新後陶芸の世界に入りました
かなりの変り種といえるでしょうね

さいわい我が盆栽界にも、小鉢を中心に幾多の名品を残してくれました
今日はその作品を見ながら陶芸の世界でいう
「釉溜まり・くすりたまり」の魅力についてお話します


竹本作
辰砂釉正方樹盆(しんしゃゆうせいほうじゅぼん)
(間口6.7cm×奥行6.7cm×高さ3.1cm)

濃い赤紫の釉薬が足元すれすれのところで止まっていますが
ころあいを見計らって窯の温度を下げなければ
釉薬は足元を覆い隠すほどに流れてしまいます

陶芸家にとってこの瞬間の判断が難しいそうです


このように上のほうから熱に溶けた釉薬が足元の手前で止まって
ぽってりと溜まった箇所を「釉溜まり・くすりたまり」と呼びます

釉薬の量感が感じられてとても魅力的で
鉢の愛好家にはたまらない景色です

みなさんもこれから焼き物をみるときには
この釉溜まりに注目してみましょう

2003年8月29日金曜日

涌泉鉢絶品


久しぶりにある盆栽界の古老を訪ねました
もちろんお目当てはこの湧泉鉢です

親子ほど年の違う間でも友達です
盆栽が人間関係をそう導いてくれるのです
これがこの世界のいいところ

ひときり昔話に花が咲きました
「宮ちゃん、子供大きくなったろ、なに、もうおめえもおじいちゃんかい、孫はかわいいだろ」

もーッ、おれをいくつだと思ってんだよ、孫の話は前にもしたのに
古老の頭の中の私は、駆け出しのころの私なのです

そのうち話が月ノ輪湧泉鉢のことに及ぶと、古老の目がさらに輝いてきました
目の奥には隠そうとしても隠し切れない、商売人独特の厳しさがチロチロと見えるのです
(私も商売人ですからわかるんです、プロを相手にしたときのプロの目が)

この厳しさがいいんです
これのないプロはやる気のないファイターみたいで魅力がありません
この目の輝きがある以上、この古老はまだまだ長生きしますよ

古老は気に入っているこの湧泉鉢は、とうとう言い値から一円も負けてくれません
よほど気に入っていたのですね
とはいえ何十年の長い付き合い、他のものは破格の相場でわけてくれました


間口はたったの5.8cm
実物より大きく見えます
線が端正でゆるみがありません


スキャナーで画像を取り込んでみました
繊細なタッチ、しかも線に力があります
この二つが大切です
精密なだけではつまらない絵になってしまいます


裏面の絵
まさに月ノ輪湧泉の円熟期の作品です

2003年8月28日木曜日

盆栽の生い立ち


この山もみじの盆栽はどのような生い立ちをもっているのでしょう
誕生したのは実生、挿し木、取り木、接木、それとも山採り?

生まれた場所は?
年齢は?
今までどこに住んでたの?

盆栽に聞いても直接答えてはくれませんから
姿形や鉢や雰囲気から推測するほかはありませんね

まず出生の秘密からいきますと、、取り木によって生まれた可能性が大です
一の枝が足元の低いところにあります、これが見分けのポイントです
実生苗から育てると、このように低いところに枝はできません

挿し木も考えられますが、もみじは挿し木の活着率がわるく、あまり普及していません
実生か山採り(おそらく実生)のかっこうのいい箇所に取り木をかけた素材から仕立てたものでしよう

樹齢も推測するほかありませんが
おそらく25~30年くらいでしょう
樹齢のはっきりしている他の山もみじの盆栽との比較や長年の経験から、推測します
やせ気味に作っているので、思ったより年はとっているようです

今まで育った場所は?
これも長年の経験からくる勘に頼ります
ずばり、愛好家の棚で長い間丹精されてきたものです

そのポイントは鉢です
はっきりいって映っていませんね、強すぎます
力のある松類に使う鉢です

プロでしたら売ることを考えてもっとやさしい感じの鉢を使うはずです
もちろん愛好家も鉢には神経を使いますが
もともと売り物ではないので、普段着でのんびりしていることもけっこうあるんです

長くなりましたが、山もみじの出生の秘密を推理してみました
おもしろかったですか?

2003年8月27日水曜日

雄山鉢鑑賞2

さて、今度は角度を変えて眺めてみましょう


右側面からの図です
絵がつながって描かれていますね
これを回り絵と呼びます、作家としては面倒な作業だといわれています

ボディーのわりに足が小さいことに気がつきましたか?
全体の姿がすっきりしているのはこのせいです
ボディー、足、縁などの調和はかなり難しいと思います
みごとな統一感です


裏面を同じ角度から見てみましょう
絵の向きが反対に描かれています
これは盆栽を植えた場合に、盆栽の向きによって両方を使い分ける為です


雄山は鉢裏に凝ります
中央の部分を一段掘り下げてあります
こういう底を押し底と呼びます

落款は雄山としてその周り線で長方形に囲っています
この落款は比較的古い時代のものです




両側面の絵です
側面といえど手を抜いてはいません
みごとに描ききっています

2003年8月26日火曜日

雄山鉢鑑賞1

藤掛雄山をかの月の輪涌山の再来と称する向きもあります
それは少々誉めすぎとしても
月香と並び、現役絵付け鉢のトップであり
やがては盆栽小鉢作家として古典の仲間入りする存在であることは確実です

その雄山鉢の五彩(ごさい)の名品をご紹介しましょう

この長方鉢は6~7年前に私が親しい愛好家にお譲りしたものですが
皆さんにお見せしたくてお借りしてきました

サイズは間口12.7×奥行10.5×高さ4.2cmで
雄山の初期から中期にかけての油の乗りきった時期の作品と思われます


重厚な形状とすっきりとした足元
白磁の色も純白で光沢があり、雄山独特の淡い色彩の色絵を引き立てています
的確な筆図使い、構図の巧みさ、遠近感など
雄山の熱い情熱が伝わってきます


淡く押さえた色調がここまで鮮やかに人の眼を引くのは
澄み切った純白の白磁の効果であり
また雄山の筆力によります


縁の四隅に菊の文様
雄山はあくまで隅々に神経を行き届かせています
もしこの文様が描かれていなければ
鉢全体の色彩の統一感は減じることになったでしょう

2003年8月25日月曜日

山採りの傷


ならの山採り
半懸崖式の迫力ある樹形です

これは富士山麓で山採りしたものです
あの辺の厳しい自然環境でなくては、このように小さなならの素材は無理でしょう

これらを採取するときには、富士砂と呼ばれる砂利状の地面に自生しているため
スッコップが利きにくいので、チェーンソウも併せて使うそうです

そのチェーンソウで誤って幹に傷をつけてしまったのですが
あまりに骨格が優れているので、鉢に入れて育てたそうです


見えますか?
立ち上がりからやや上の部分に幹を横断する直線の傷
これがチェーンソウのものです
もう少し深ければ幹は切断されていたでしょう

無残ですが時間をかければ肉が巻いて
かなり目立たなくなるはずです

すんでのところで命拾いしたならの盆栽君でした

昔、断崖絶壁に自生する糸魚川の真柏の山採りに挑み
幾多の尊い命が失われたそうです

そんな盆栽史が頭をよぎりましたが
富士山麓なので
チェーンソウで幹を傷つけてたくらいで済みました

2003年8月24日日曜日

盆栽用語の2

私らが無意識に使っている盆栽用語も
こうして思いつくままにならべるとけっこうありますね

[ふところ]        内側、なかがわ
              ふところ枝、芽ー輪郭線より内側の枝や芽のこと

[ききえだ・利き枝]   構図を形つくる重要な枝のこと

[こやす・肥す]      肥培すること肥料をやって太らせること

[こまる・困る]      弱ること、樹勢がおちること

[ふっこむ・吹っ込む] 小枝が細かく密になりふえること

[さばく]          整理すること  根さばき・枝さばき

[ニュー]         割れ傷のこと

[ホツ]          ぶつけた傷のこと

[カマキズ]        窯のなかで焼いている最中に火の加減でできた傷のこと

[さく・作]         培養のこと 作がいいー培養管理がうまくいっていること

[やまい・病]       病気のこと 

[ねむる・眠る]     冬眠するなど活動しれいない状態のこと この盆栽は眠ったままだー冬眠から醒めずにいること

[かぜ・風邪]      寒がっていること この木は風邪をひいている

[しょうき・生木]     実生木のこと

[つぎ・接]        接木で仕立てた木のこと

今日のところはこのくらいにしておきますが
まだまだ出てきそうです

2003年8月23日土曜日

ネットで盆栽講評

新企画[ネットで盆栽講評]のトップバッターは山梨県の今再さんの真柏です
毎回掲示板に盆栽の画像を投稿していただいており
その力まないおおらかな人柄は掲示板のカキコの文章からも読み取れますね

さてそれでは盆栽のほうを拝見するとしましょう



挿し木の苗を、人工的にぐりぐりと捩じるように針金を掛けて仕立てたもののようです
葉は細かく色もきれいで、いわゆる葉性(はしょう)がいいです

1 将来目指そうとする樹形がはっきりしていません
  模様木はわかるんですが、芯の部分がうつむいているのが、いかにも無目的です

2 芯と枝に針金をかけて、目指す樹形の基本の図柄を出しましょう

3 その際、根元から捩じれた幹の味が、芯に行く部分で平凡になってしまっているので
  芯に近い箇所にも強い屈曲をつけてください、寸法も短くなり、一石二鳥です

4 葉は細かく色もきれいで、いわゆる葉性(はしょう)がいいので楽しみです

5 また足元からの曲がりがおもしろいので、ここを強調するような樹形を考えましょう
  芯の部分の幹、樹冠の輪郭はおおよそ赤線で示しました
  かなり追い込んで小さくします

6 以上の改作を試みて再挑戦してください

2003年8月22日金曜日

町直鉢


今岡町直作
辰砂釉切立正方樹盆(しんしゃゆう・きったて・せいほう・じゅぼん)

私が盆栽をやるようになって初めて接した小鉢が町直鉢でした
当時、東京は洗足池の風致会館という場所に
中村是好、明官俊彦、佐野大助、田代与志、岡田晃などそうそうたるメンバーが集い
講習会や展示会を催していました

その集いに、ひよっこの私も何度か参加しました
そこで今岡町直氏が自作の鉢を販売していたのです

背の高い上品でハンサムな中年の紳士で
なんでも学校の教師をされているということでした

その頃の今岡さんの鉢には
500円から高いもので3,000円くらいの値段がついていたのを記憶しています

欲しかったけれど3,000円の小鉢は買えませんでしたね
せいぜい500円から眼いっぱいで1,000円くらいまでの小鉢を10個くらい買ったでしょうか

いま思い出すと、そのときの3,000円の小鉢は素晴らしい作品でした
町直得意の青磁に辰砂の釉薬が縁にかけられ、それが劇的に垂れていました

今では町直鉢もコレクターが手放さないため、いい作品を市場で見ることも稀になりました
もっと買っておけばよかった思いもしますが
35年も前の私にはそれだけの鑑賞眼もなかったし、先を見通せる経験もありませんでした
だいいち買ったとしても今まで持っているなんてことは、考えられませんね

2003年8月21日木曜日

山もみじ素材

足元の根張りと幹筋が抜群の再生用の山もみじの素材です幹肌も縦縞が入って、バカ古です

こういう好素材に巡り会うと、ついついこの盆栽の生い立ちを考えてしまいます
どういう持ち主に育てられてきたんでしょう

こんないい素質を持ちながらろくな面倒も見てもらえなかったのでしょう
世が世であれば、名木とほめちぎられているはずです

でも今からでも遅くはありませんよ
盆栽の一生は長いんです
適切な培養と技術により脚光を浴びる存在になることが可能です



根張り、幹模様、木肌など申し分ありません

向かって左の一の枝は不要です
その下の丸印の箇所に一の枝があれば理想です

二の枝は間延びしていますが使えます
矢印のところに芽があります、その芽を大事にして将来の二の枝にします

向かって左の上部の矢印が三の枝です

裏枝も適切な箇所にありません

来春にきちっとした根さばきをしてやや大きめの仕立て鉢に植え替えます
同時に不要枝は元から切ります

有用な枝は約1cm残して切ります
残した枝元から芽が吹きますから、その芽を伸ばして枝にします

枝のないところには、呼び接ぎをして枝を作ります
そのためには、不必要な箇所の芽を徒長させる必要があります



2~3年計画で枝の基本を作っていけば
将来は立派な山もみじの小品になります

そのためには、つれづれ草で呼び接ぎの技術を紹介する必要がありますね
適した素材を確保しておくことにしましょう
呼び接ぎの技術を習得すると、雑木盆栽作りの幅がグーンとひろがります

2003年8月20日水曜日

盆栽用語

盆栽界には特有の用語があります
用語辞典を作るほどではないけど、中には解説しないとわかりにくいものもあります
今日はそのなかから思いつくままに幾つかとり上げてご紹介します

[からい] 少ないこと
      水がからいー水やりの量が少ないこと
      
[がれる] やせること・弱ること
      この木はがれているーやせて弱っていること

[たっぱ] 背の高さ・寸法・サイズのこと
      たっぱが高いー背が高い

[きせい・樹勢] 木の元気さのこと
          樹勢がいいー元気がいいこと
          樹勢がわるいー元気のないこと

[追い込む] 切りつめること
        枝を追い込む・一の枝を追い込む

いかがですか?

ちょっと紹介しただけでも幾つかわかりにくいものがあります
こんな盆栽界にだけ通用する言葉を使うと、ベテラン気分ですね
機会があればもっとまとめてと紹介しましょう

2003年8月19日火曜日

隠れたおしゃれ


藤掛雄山造
染付撫角長方樹盆(そめつけなでかくちょうほうじゅぼん)

鶉(うずら)は絵付けの題材として好まれます
周り絵で5羽の鶉が描かれていますが、
それぞれに異なった動作をしているのが印象的です
小さい鉢ですが力作です

撫角(なでかく)とは、丸みのある角のことです
また、周り絵とは、4面の絵がつながっていることをいいます

ところで、盆栽鉢は、盆栽の引き立て役という大前提があります
雄山はその点を配慮して、やや淡い呉須(青い釉薬)を使い
ほどよく余白をとり、繊細なタッチで描いています

そして、ある面制約された作者の真情が思わず表面ににじみ出ているのが
鉢裏の装飾であると私は考えます
みなさんそうは想いませんか?


内側に文様を描いて透明釉を施し
またその内側を、木瓜型(もっこがた)に一段低く削り取り
雄山と独特の字体で落款を書いています
じつにお洒落ですね

雄山がときどき見せる技です
絵付けをする作者が、もっと描き込みたいとの欲望を抑制し
鉢底の文様にその気持ちを吐露しているような気がしてなりません

題目は「隠れたお洒落」としましたが
「隠された欲望」とでもした方が適当かもしれませんね

2003年8月18日月曜日

鉢の価格



京都の鉢作家、御蔵山の作品です

血のように赤い釉薬は、鶏血釉(けいけつゆう)と呼ばれています
派手過ぎると思う方もいるでしょうが、できたてのピカピカでも
使い込んで時代感が出てくると、白や黄色の花物や実物によく映るようになります

ところで御蔵山鉢がこの2年くらいの間にずいぶん値下がりしました
値下がり幅は50%を楽に越えています
ものによっては、従来の70%OFFくらいで買えるものもあります

今日も親しい盆栽鉢の収集家がみえて
小鉢の話をしているうちに、御蔵山の値下がりの話になりました
有力な盆栽月刊誌の誌上頒布コーナーで調べてみると
数年前と現在では、やはりかなりの値下がりです

いったいどうしたのでしょう
御蔵山といえば現役中でも中堅以上の有名作家で
評価はすでに定まっている感があったのです

私個人としては、誌上頒布などの評価額がやや高過ぎる感じがして
いままでにほとんど扱わなかったのは幸いしましたが
数多くコレクションされた方もたくさんいると思います

投機で収集したわけでなくとも、やはり評価額が落ちると熱もさめるでしょう
また言いかえれば、評価の高い有名作家が一人減るというこは
淋しいことですし、盆栽界の損失です
残念ですね

もちろん新たに購入するする方は、安い方がいいに決まってます

また、盆栽や小鉢を売買する私としては
どういうメカニズムが働いてこれほど短期間に値下がりしたのか
非常に興味はあります

2003年8月17日日曜日

けやきの樹形

盆栽樹形には直幹、模様木、懸崖、文人、株立ち、石付、寄せ植えなどがあり
幹の本数からは単幹、双幹、三幹、五幹などに分類されます

ほとんどの樹種はほとんどの樹形に仕立てられています

ところが昨日項の杉と同じで、けやき場合も、直幹体が大原則です
本数は単幹でも複数幹でも、また寄せ植えでも、とにかく直幹体が本筋です


(けやき箒作り)

盆栽は、自然界にあるその樹種の姿を手本にすることが原則です
盆栽界には「らしい」というほめ言葉があります

けやきらしい姿だ、というときにはほめている言葉です
その樹種本来の持っている性質に素直に従って仕立てられていて
好感が持てる場合に使います

けやきは直幹体が、けやきらしい姿なのです

けやきや杉以外の樹種は、自然界にはとてもなさそうな樹形に仕立てられていても
文句は出ませんが
けやきと杉だけは、模様木や懸崖には仕立てません

けやきには、まれに段作りといわれる作り方もありますが、これも直幹が原則です
直幹以外の樹形には市民権が与えられないのでしょう

私も模様木のけやきや杉の盆栽を見たいと思ったことはありません
やはり直幹派です

2003年8月16日土曜日

杉の樹形

盆栽樹形には直幹、模様木、懸崖、文人、株立ち、石付、寄せ植えなどがあり
幹の本数からは単幹、双幹、三幹、五幹などに分類されます

ほとんどの樹種はほとんどの樹形に仕立てられています

ところが杉の場合は、直幹が大原則です
本数は単幹でも複数幹でも、また寄せ植えでも、とにかく直幹体が本筋です



盆栽は、自然界にあるその樹種の姿を手本にすることが原則です
盆栽界には「らしい」というほめ言葉があります

もみじらしい姿だ、というときにはほめている言葉です
その樹種本来の持っている性質に素直に従って仕立てられていて
好感が持てる場合に使います

杉は直幹体が、杉らしい姿なのです

杉以外の松柏類は、自然界にはとてもなさそうな樹形に仕立てられていても
文句は出ませんが
杉だけは、模様木や懸崖には仕立てません

杉の直立する雄大な姿が、あまりにも強烈に私達を魅了するので
直幹以外の樹形には市民権が与えられないのでしょう

私も模様木の杉の盆栽を見たいと思ったことはありません
やはり直幹派です

2003年8月15日金曜日

形小相大(けいしょうそうだい)

小さな盆上に大きな姿を表現する
これが盆栽を作る時の基本的な姿勢であることは、みなさん知っています

それでは小さな盆栽を、どうしたら実際より大きく見えるようにできるか
今日の課題はそのことです

まず下のガマズミですが、みなさんが見て、樹高何センチくらいの盆栽だと思いますか?


(正面の図)


(足元の図)
正解は樹高7cm×左右10cmのミニです
いいんですよ、予想が外れても、誰だって当たりませんから


(裏面からの図)
私の手に持たれた画像ならサイズがわかりますね
とにかく小さいです

みなさんはもっと大きい盆栽だと思ったでしょう
まさに「泰然として大樹の相あり」なのですが
では、どういう工夫をしたら盆栽が大木然としてくるのでしょう

第一に、根張りや足元を発達させ、コケ順をよくします

第二に、完成に近づくにしたがって、下のほうから枝数を少なくしていく
つまり利き枝を残して、枝数を制限していくんです

第三に、完成に近づいたら、鉢を小さくしていくことです
鉢選びは形や色も大切ですが、みなさんの鉢選びは、サイズがやや大きめです
鉢を小さくすることは、徒長を防いだり、小枝を密にしたり、他にいいことがたくさんあります

以上の三点を心がけてください

特に注意
第二の項に関連があります
初心の方が、幼い苗木を幹だけでなく枝順まで几帳面に決めているのをよく見ます
これはほとんどの場合間違いです
根も出来ていない苗をいじめているの過ぎません
枝葉を多くつけて根も幹も充実させてから順次枝を決めていきましょう

人間と同じです
子供の発達段階にあわせた躾や教育が大切です
まずはのびのび育てること

2003年8月14日木曜日

姫シャラの胴枯れ病


(姫シャラの参考画像です・胴枯れ病とは関係ありません)


(姫シャラの参考画像です・胴枯れ病とは関係ありません)

姫シャラの特徴はまずその茶褐色に輝く幹肌の魅力が上げられますが
もともと高山の湿気の少ないところに自生する植物なので
平地で培養すると胴枯れ病という、木肌を犯す病気にかかりやすいのが欠点でした

木肌と形成層を犯すその病原菌は
ひどくなると枯れ死に至ほどのしつこく、対策が難しいものとされていました

ところが近年「Topジン」という特効薬が開発され
胴枯れ病は根治されるようになりました
まさに盆栽界の朗報です

これで日本各地の平地でも心配なく姫シャラ盆栽を楽しむことができるようになりました

薬剤名は「Topジンオイルペースト」です
幹肌に塗布します
お悩みの方はこの薬剤を使用してください

2003年8月13日水曜日

楓弱る!冷夏の祟り



期待していた楓の調子が悪く、参りました
培養のサイクルを狂わしてしまったようです

春の新芽を摘まずにやや伸ばし加減にしておいたものを
入梅前に一節残して切り込みました
ところが長雨と低温のため、芽の伸びが悪く葉も大きくなりません

そこを急に直射日光にさらしてしまったのでまたまた芽のイジケテしまいました
そんなことを二度繰り返してしまいました

↑の画像が現在の様子です

芽が動いてくれるのを願っているのですが
あいにくの冷夏です
こう天候不順で、急な暑さと涼しさが交互にやってくると根も活動しません

真夏の暑さよ戻ってくれ
暑さが続けば日陰で休ませてやり、根も動くのですが・・・



救いは葉が固まっていることです
冷夏に耐えて、なんとかこのまま秋の紅葉時期まで我慢してもらいたいです
落葉樹は秋の紅葉時期まで葉が付いていれば、越冬にも耐えられます

さてこの後の対策ですが

芽は絶対摘みません
葉も大事にします
それと暑さが数日でも続くようなら、前もってハイポネックス(液肥)を用意しておき
2,000倍にして施肥します

ある程度の暑さが続かないと肥料を吸収しませんから、その点気をつけましょう
強い日差しだけは避けてやります

その肥料を吸収できれば木も勢いを取り戻して根が動きます
しかし、芽は摘みません

液肥のハイポネックスで注意することは
倍率を間違えない
松柏類にはやらない
その二点です

天の神様仏様、どうぞ天気になりますように
(みなさんも一緒にお祈りしましょう)

東北や北海道の愛好家の皆さんは
例年でも以上のことを頭に入れて培養してください
ハイポネックスは効果あります

2003年8月12日火曜日

切口のふさぎ方

楓のミニです
入梅前に大きな枝を切りました
その切り口がどうなっているか検証しましょう


入梅前の姿


現在の姿
(ここで頭の徒長芽を摘み込み
二の枝の下にあった枝も元から切りました)


一の枝の筋を通すために切った箇所があります
カットパスターを塗布しておきました


みごとに肉が巻いています
好調です
こんな時は早めのカットパスターを取り除きます
肉が巻きすぎてしまうからです


幹の裏側にもこんな大きな切り口があったのです
これはコブ状の箇所を削ったのだと記憶しています
みごとに巻いています
楓の生命力ってすごいですね

でも少々肉が巻き過ぎていますね
もう少し早めにカットパスターを取り除けばよかった!

このように肉が巻き過ぎたときは
改めて出っ張ったところだけを「幹の丸みに沿って」来年以降に削りなおします

教訓
切り口はよくチェックして肉が巻き過ぎないようにしよう!!

2003年8月11日月曜日

二重鉢で夏対策



富士桜のミニを手に入れましたが
小さいので二重鉢にしてありました
春に出た根がけっこう長く伸びています

根を傷つけないようにそっと持ち帰って
同じく二重鉢にします
夏が過ぎるまでこの根を切らない方が無難です


別に難しいことはありません
二周りばかり大きな鉢に粗めの植え土をいれます


そこへ適当な深さに富士桜の鉢を据え付けてます
周りに植え土を入れて出来上がりです


これで夏対策はバッチリです
集団でもっと大きな箱状のものに入れてもいいでしょう

ぜひ実行してください
盆栽たちも喜びますよ

2003年8月10日日曜日

台風一過

台風一過というと、高ーいさわやかな秋の空を思いだしますが
とんでもない、今日はギンギンの真夏日
強い陽射しに蒸し暑さも加わって、それはひどいものでした

ところで昨日は早とちりをしました
前の晩のテレビの天気予報は9日の午前6時の台風の予想位置を
東北地方に示していました

それを見ていた私は、朝の天気予報を確かめずに
台風はすでに通り過ぎた、と決め込んで仕入れに出かけたのです
ごていねいに、掲示板に台風お見舞いと関東はかすった程度でした、と書き込んで

家を出たのは午前9時ごろでしょう
幸いに上物に出っくわして余裕の出た私は、もう一軒と思い車を走らせました
ところが午前11時ごろ、突然に突風と激しい雨に遭遇、
なんだこりゃあと思ってハンドルにしがみつきました

目指す同業者のところへ着いても、車から出られないほどの大雨、大風
同業者も、よく出てきたね、とビックリ
それでも私はまだ正確な情報を知らずに、一過性の雨と風だと思い込んでいた始末

家に電話をかけると、うちのカミサンも例の天然ボケ
もう台風行っちゃったんじゃない
と、まったく感じてないんです
参った!

目ぼしい盆栽を避難させるように言いつけて
一目散に家に帰りました

幸い被害はゼロでしたが、盆栽屋にとって風ほど怖いものはない
のです

2003年8月9日土曜日

けやきの根張りについて

けやきの根張りも実生と取り木ではその形が異なります
このけやきは実生から育てたものです
幼苗の時代に移植の際、ごぼう根を切って根張り作りに専念してきたものです





根から幹として立ち上がる部分に肉がついて、もっこり盛り上がって
盤状になっています
これが実生の優れたところです

取り木では細い根が立ち上がりの部分から四方八方に出ますが
立ち上がりの部分になかなか肉が盛り上がらないものです

それそれの生い立ちによって根の形状も異なることを覚えてください

2003年8月8日金曜日

姫りんご取り木

姫りんごは、秋から冬の盆栽展示会シーズンの彩りとして、なくてはならぬ存在です
通常は接木から仕立てます

ところが接木ですと、ある程度の太さになった頃には台木も成長して
根が太くなり小さい鉢に入らないという悩みも生じてきます
そこでミニの場合、取り木をかけて小さい鉢に入るように仕立て直します

鉢に入ったものを取り木するのはけっこう難しいので
若木にうちに畑で施術します
畑で勢いをつけて針金で締め上げ方式で行います


取り木で仕立てた姫りんご
可愛い実が二つ
来年はもっとたくさんなります


取り木仕立ての姫りんご
根が異常に太らないので小さい鉢に納まります
これは便利
今までの取り木のよる方法より一段と進歩しました

2003年8月7日木曜日

けやき鑑賞


ちょっと自慢できるけやきを手に入れたので鑑賞しながら
けやき盆栽のポイントをお話しましょう


根張りを重視するのは盆栽全般にいえることですが
けやきの樹形は原則として直幹が本筋で
それ以外の樹形は認知されていないといってもいいでしょう

そのため、八方に張ったバランスのとれた根張りがふさわしいのです
その点からいっても満点の根張りです

立ち上がりの幹も真っ直ぐですね
これが理想の姿です


立ち上がりから真っ直ぐな幹、そして枝わかれの部分も大切です
急激に太らせたものはここに熱を持ち醜くふくらんでしまいます
芽摘み、葉刈りをマメにして常に木の勢いを制御します
野山のけやきの枝わかれの素直さ、参考にしてください

また木肌に時代感もにじみ出てきていて、古木然として雰囲気が感じられます


芯の行方と枝つきのようすを下から見てみましょう
傷や熱をもってふくれた箇所はないかな
大丈夫です

最後になりましたが、けやきの場合も、持って生まれた葉や枝の性質もポイントです
葉が細かく小枝が上に向かって伸びる性質が望ましいのです

土払い品500鉢

10日ほど前に隣市の某愛好家さんから土払い(どばらい)のお話しがあって引きうけることにしました。盆栽界で土払いというと、盆栽や鉢などすべての持ち物の売買のことをいいます。 プロでもアマチュアであっても、生き物(盆栽)の後継者がいない場合は売り払うか、さもなくば枯らすことになります...